2012年2月29日水曜日

ハンチントン『軍人と国家』-3

権力、プロフェッショナリズムおよびイデオロギー―シビル・ミリタリー・リレーションズの理論
シビリアン・コントロールの諸形態
  • 「シビリアンコントロール」は未定義の概念
    • ここでは「いかにして軍人の権力を極小にしるうか」を定義の基本的な問題とする
  • 2通りの答え=主体的シビリアンコントロールと客体的シビリアンコントロール
  • 主体的シビリアンコントロール
    • 文民グループの権力の極大化
      • しかし、文民グループは多数+多種多様ゆえに利害不一致→軍部に対して全体として権力の極大化が不可能
    • シビリアンコントロールの一般的概念は任意の文民グループの利益と同一視される
      • ゆえに主体的シビリアンコントロールは各文民グループ間の権力関係を含む
      • 常にどの文民グループがこの統制を行おうとしているかを問うことが必要
    • ごく最近のことを除けば、西欧社会においてはシビリアンコントロールはこの主体的な意味においてのみ存在してきた
    • 事実、主体的シビリアンコントロールは専門職業的な将校団が存在しない場合に可能なシビリアンコントロールの唯一の形態
  • 主体的シビリアンコントロールの種類
    • 政治制度によるシビリアンコントロール
      • 17c-18cの英米では軍隊は国王の統制下
      • 「シビリアンコントロール」というスローガンは国王に対して権力を増大させる手段として議会グループにより採用
        • 国王も議会同様に文民であるゆえ、一般的なシビリアンコントロールではなく、軍隊に対する議会のコントロールを極大化する意
        • また、国王から権力を奪取する手段
        • 現代のアメリカも類似=議会vs大統領府
    • 社会階級によるシビリアンコントロール
      • 18c-19cのヨーロッパ貴族vsブルジョワジーの軍隊のコントロールをめぐる闘争
    • 立憲形態によるシビリアンコントロール
      • シビリアンコントロールを特定の文民の利益と同様に同一視するという考え方の広い適用は主に民主制などの特殊な立憲形態のみが、シビリアンコントロールを保証しうるという主張がなされる場合にみられる(ややこしい日本語!)
      • シビリアンコントロール=民主政体、軍部の支配=絶対主義的/全体主義的政体
        • 民主主義国家における政策→説得と妥協の産物
        • 絶対主義国家における政策→力と威圧、脅迫の産物
        • したがって、(軍部の力 in 民主主義国家) < (軍部の力 in 全体主義国家)
      • …という主張は必ずしも真実ではない
        • 民主主義国家における軍部
          • 民主的な政府や政策の立法過程と諸制度によってシビリアンコントロールの基礎を危うくし、大きな政治権力を獲得しうる(ex. アメリカ in WW2)
        • 全体主義体制における軍部
          • 軍部の権力の弱化がありうる
            • 互いに競争的な単位に将校団の分割
            • 党派的な軍隊や特殊な軍隊(ex. 武装SS、ソ連内務省)の組織
            • 独立の指揮系統を持った軍隊の全国浸透
          • テロや陰謀や監視や暴力は全体主義国家における統治の方法
            • これらは全体主義国家で文民が軍隊を統制する手段
            • 十全に行使されたならば、軍部の政治権力を抹殺しうる(ex. ドイツ in WW2)
        • したがって主体的シビリアンコントロールは特定の立憲制度の独占物ではない
    • 軍事専門職業の発生は、シビルミリタリーリレーションズの問題を変形させ、軍隊に対する支配権の極大化を志向する文民グループに困難を強いた
    • 競合の文民グループのみならず、新しく、独立の機能を持った軍の要求とも対峙する必要あり
    • 主体的なシビリアンコントロールの特殊な形態の持続の主張のためには、これらの要求が否定ないし変質させられる必要性
      • どちらもされなければ、主体的シビリアンコントロールは不可能
    • 軍隊の機能上の要求と軍の外の社会との間の関係を調整するいくつかの新原理が必要
    • 特定の文民グループの手段的な価値に過ぎない限り、どの意義に関しても共通の同意を取り付けることは不可能
    • このことは、「シビリアンコントロール」が18c、19cにしばしば登場するが、十分に定義されることがなかったことの歴史的事実の説明をなす
  • 客体的シビリアンコントロール
    • 生んじ専門職業の発生による主体的シビリアンコントロールの旧式化後のシビリアンコントロール
    • ミリタリープロフェッショナリズムの極大化
      • 将校団の成員に専門職業的な振る舞いをさせるための軍人グループと文民グループの間の政治権力の分配
    • 主体的シビリアンコントロールとは正反対
      • 軍人を軍人たらしめ、彼らを国家の道具たらしめることによる目的達成
        • 主体的シビリアンコントロール…軍人の文民化、彼らを国家の鑑たらしめることによる目的達成
      • 客体的シビリアンコントロールのアンチテーゼ…政治への軍人の参画
        • 軍部が制度的、階級的、立憲的な政府に漸次巻き込まれるにつれて、それだけ弱体化する
          • 主体的シビリアンコントロールはこれを前提
      • 本質…自律的なミリタリープロフェッショナリズムの認識
        • 主体的シビリアンコントロールの本質…軍の独自の活動分野の否定
      • 客体的シビリアンコントロールへの要求は軍隊の専門職業化に由来
        • 主体的シビリアンコントロール
    • 軍部の権力を最小限に留めるという要素はどちらのシビリアンコントロールにも共通
      • 客体的シビリアンコントロールでは軍の専門職業化、政治的安定と中立により達成
        • 全ての文民グループにとって軍部の政治権力のレベルを最低限まで下げることを意味する
          • かつ、専門職業の存立に必要な権力の本質的要素を保持させる
        • 高度に専門職業化された将校団は、国家内部で合法的権威を保持している文民グループの願望を満たす用意がある
        • このことが結果的には、多種多様な文民グループの間の政治権力の配分とは無関係に軍部の政治権限の限界を規定する
    • プロフェッショナリズムが最極大化される点を超えて軍部の権力が弱化させられる場合
      • 特定の文民グループの利益に寄与し
      • 文民グループ間の権力闘争においてそのグループの権力を増大させることとなる
    • ミリタリープロフェッショナリズムを最も促進する政治権力の分配は、軍の権力が、文民グループのうち任意のものに肩入れされず、弱化させることが可能な最低点を決めるものである
    • このような理由から、シビリアンコントロールの客体的定義は
      • 政治的に中立であらゆる社会集団が認めるようなシビリアンコントロールについて唯一の具体的基準を含み
    • 主体的なシビリアンコントロールの定義付けは、シビリアンコントロールと軍事的安全保障との間の構想を前提としている(シビリアンコントロール or 軍事的安全保障)
      • 軍事的不安がシビリアンコントロールを不可能にすると主張する特定の文民グループの信奉者によって一般に認められてきた
      • 安全保障上の脅威が増大するにつれて、軍事的要求も増大し、それに対抗して、軍部に対する文民の統制権が弱まるということを言おうとしたに過ぎない
      • 軍事的安全保障を達成するのに必要な手段はシビリアンコントロールの基礎を危うくするものとみなされる(諸刃の剣)
      • 主体的シビリアンコントロールを強化しようとする努力による軍事的安全保障の基礎を危うくする例(後の引用参照)
    • シビリアンコントロールが客体的な意味において定義されるならば軍事的安全保障という目標との間の矛盾は存在しない
      • あらゆる文民グループにとって可能な最低限まで軍部の権限を弱化させる
      • 軍事的安全保障を達成する可能性をできるだけ大きくする
    • 客体的シビリアンコントロールは軍事専門職業の登場以降に出現
      • 客体的シビリアンコントロールの達成は、主体的シビリアンコントロールを依然として目標とする文民グループの傾向によって阻害される(「文民グループは、政治的に中立な将校団を全然容認したがらない。彼らは、将校団が彼ら自身の利益と原理に服従することを強要し続ける。」)
      • その結果、高水準の客体的シビリアンコントロールは近代的な西欧社会においてさえもまれな現象
例えば、文民グループが、国家政策についての軍部自身の考え方を持った個別の軍事専門職業の存在を認めなかったために、彼らは、しばしば軍部の権力の弱化が平和を維持するのに必要であると考えた。しかしながら、そのような軍部の権力の縮小は、しばしばよりいっそう好戦的な文民グループの権力を増大させる結果をもたらした。その結果、軍部の権力を減少させることによって戦争の危険をできるだけ少なくしようと試みたそれらの文民グループは、しばしば彼らがまさに回避しようと務めていたことをかえって促進させることになった。第二次世界大戦の直前の数年間に日本を除いて、その後のすべての交戦国で軍部の政治権力の組織的な縮小がみられたり、あるいは冷戦の機器の度合いがソビエト同盟の将軍たちの政治権力とは逆の方向に変化するようにみられるといった状態は決して偶然の出来事ではない
シビルミリタリーリレーションズの2つのレベル
  • 2つのレベル
    • 権力
      • 社会内部の文民グループとの関連における将校団の権力
      • 軍人の権力と文民の権力を測定するための尺度が必要
    • イデオロギー
      • 社会において支配的な政治的イデオロギーに対して職業軍人倫理が両立しうるか
      • 職業軍人倫理が多様な社会的意見に対し、どこまで適合しているかについて若干の考察が必要
  • 権力=他の人々の行動を統制しうる能力
    • 少なくとも2つの次元
      • 権力の大きさ(ある人間の特定の種類の行動が、他の人間によってどこまで統制されるか)
      • 権力の範囲ないしは所在(他の個人ないしはグループによって影響される行動の種類)
    • 権力の2つの形態
      • フォーマルな権威
        • 一定の社会構造の中で占めるそれぞれの地位を基礎にした、ある人間の他の人間に対する統制を含む
        • 属人的なものではなく、地位や職位に付属するもの
        • 一定の構成された権力、ないしは合法的な権力
        • 持続性を持った形態の関係であり、その関係に含まれる諸個人が入れ替わっても比較的一定したまま持続する関係
      • インフォーマルな影響力
        • 権威では回収し切れない権力の側面
        • 特定の個人やグループに属するもので、地位や役割に付随するものではない
    • 権威
      • シビルミリタリーリレーションズにおける権威のパターン分析の基準…軍人及び文民の各グループの権威の相対的なレベル、相対的な統一性、相対的な権力の範囲
        • あるグループの権威のレベルが高いほど、そのグループの統一性は大きく、権威の範囲も広く、強力なものとなる
        • 相対的なレベル
          • グループが政府の権威のヒエラルヒーの中で占める地位に関係
          • 将校団の権威のパターン
            • タテの統制:軍部の権威が従属的なレベルに格下げされるまでに軍部に対して行使(突然出てきた。謎。)
            • 軍or軍の指導者が軍の最高権力を行使する場合:最も高い
            • 軍が他の政府組織に対する権威を持たず、その逆もない場合:上より若干低いレベルの権威
              • 2つの並行的な権威の組織
                • 文民の権威と軍人の権威
            • 将校団が強力な究極的権威をもつただひとつの他組織に対してのみ従属している場合(将校団が最高権力に直接近づく道が開かれている場合)
              • その政府組織の機構の中で次第に一層従属させられる可能性あり
              • 一般にはそのような従属は極端に強まることはなく、
              • 通常は将校団と最高権力の間にはただ1つの権威のレベルがあるにすぎない
                • この1つのレベルは普通、文民の省大臣という形を取り、
                • このようなレベルの軍部の権威は大臣の統制と呼ぶことができる
        • 相対的な統一性
          • 一定のグループが他のグループとの関係において構造的に統合されている程度による
          • 統一性が相対的にある側のほうが有利
            • 3軍がバラバラな場合よりも、統合参謀本部のようなものがある方が、3軍を互いに競わせて漁夫の利を得るということを阻止することができる
        • 権威の範囲
          • そのグループが権力を行使することが公式に認められている価値の種類と形態に関係する
          • 軍人グループの権威は通常、軍事問題に限定
          • 水平的なシビリアンコントロール
            • 「軍が政府部内のほぼ同一レベルの文民機関ないしはグループの水平的な活動によって一定の範囲内に限定される程度におおいて、軍部に対して行使される」
    • 影響力
      • 評価の4つの尺度
        • 将校団とその指導者の集団的親密性
          • あるグループの影響力を図る上で、他の有力なグループや個人との親密性のその程度と性質
          • 将校団については3つの型
            • 軍務以前の親密性
              • もし、将校の大多数が特定の階級出身であった場合、その階級から受ける影響力は増大する
            • 議会の委員会との特別の関係や軍が消費する物資を生産している産業との特別な関係から生じる親密性
            • 退役後の親密性の発展
              • もし退役した将校が、通常みられるように、ある特殊な種類の職業に就いたり、その国の特定の地域に定住するようなパターン
        • 将校団とその指導者の権威に従属した経済的ならびに人的資源
          • 物的、人的資源が軍事目的に割り当てられる割合が大きいほど将校団とその指導者の影響力は大きくなる
            • ただし、軍の権威に従属した資源の増減が必ずしもその権威自体に何らかの変化をもたらすとは限らない
              • 軍の権威のレベル、統一性、範囲は軍の統制下の資源に変化が起こっても一定のまま持続
        • 将校団と他のグループとのヒエラルヒー的相互交流
          • 非軍人的権力機構の中で権威ある地位に将校団のメンバーが就けば、軍人の影響力は強化される(旧日本軍のパターンか?)
          • 逆に、非軍人的個人の影響力が定型的に決められた将校団内部に強く浸透する度合いに応じて軍人の影響力は弱化される(ナチスドイツ?)
        • 将校団とその指導者の威信と人気
  • イデオロギー
    • 文民グループにもいろいろあるので、ただひとつの文民的価値vs軍人的価値という二項対立は不可能
      • 軍人的価値は具体的かつ永続的、普遍的であるが、「シビリアン(civilian)」という語は単に非軍事的(nonmilitary)と言っているに過ぎない
    • 軍人倫理を文民倫理の一種である政治的イデオロギーにみられる代表的な4つと比較
      • 政治的イデオロギーは1組になった価値であり、国家の問題をめぐって志向された種々の態度である。
      • 自由主義との比較(原則、自由主義(者)を主語とする)
        • 自由主義の本質は個人主義にあり、個人の自由に与える政治的、経済的、社会的束縛に反対
          • 軍人倫理は(人間が)性悪であり、弱く、非合理であると主張し、人間は集団に従属しなければならないと主張
        • 人間同士の関係は自然状態において平和的
          • 軍人倫理は人間関係は自然状態において対立関係
        • ある企業の成功は個人のエネルギーの最大限の発露
          • 軍人にとっては服従と専門化による賜物
        • 人間性は素直なもので、教育や適当な社会制度によって改善しうる
        • 通常、進歩の存在を信じ、歴史の意義をできるだけ小さく評価する
        • 権力の存在の否定、その重要性の軽視ないしは権力を悪とみなす
          • 軍人は人間関係における権力の重要性を強調
        • 自由主義は国家の安全保障そのものを実在するものと考える
          • 軍人は国家の安全保障はいつも脅かされていると考える
        • 自由主義的思考は概して、経済や経済的福祉に感心を持ち、
        • 自由主義は大規模な軍事力や勢力均衡外交や軍事同盟に反対し、
        • 平和は国際法や国際司法裁判所、国際的機構といった制度的手段により獲得できると考える
        • 自由主義者は自由主義的理念の発展のための戦争には賛成
          • 国策の手段としての戦争は非道徳的であるが、正義と自由のための戦争は道徳的
          • 軍人は、抽象的に戦争を受け入れるが、その特殊な表現には反対
        • 自由主義は一般に、平和や立憲政治にとっての脅威として、軍備や常備軍に反対
          • 軍事機構が必要であるとしても、自由主義的原理を反映している軍事機構である必要があると考える
            • 自由主義にとってシビリアンコントロール=軍事組織に自由主義的考え方が反映されたもの
          • 国家の防衛はすべてのものの責任であり、少数者により独占されるものではない
      • ファシズムとの比較
        • ある点では類似するが、ひとつの根本的差異が存在
        • ファシストは軍人が出来るだけ効率良く戦うことを生存の事実として受け入れているところを、生存の最高の価値として賞賛する
        • ファシストは闘争を最高の人間活動として賛美する
        • 国家や政党を道徳的価値の具体化、道徳性の究極の源泉として迎える
          • 軍人倫理は民族国家をひとつの独立の単位として容認する
        • 戦争と暴力の美化
          • 軍人の思考は戦争を容認する
        • 力それ自体をひとつの目的として礼賛する
          • 軍人は力の必要性と行使を認める
        • 指導者の思考の権力と能力の強調、指導者の意思に対する服従を絶対的な義務として強調
          • 軍人倫理は社会におけるリーダシップと規律の必要性を認める
        • 人間性と歴史に関して、ファシストは選ばれた国民ないしは民族の生まれながらの優秀性、指導者の固有の天才及び思考の美徳が存在すると信じる
          • 軍人は人間の普遍性を強調し、軍人の思考はすべての人間を疑ってかかる
        • 直感の重視
          • 秩序だった知識や実際的、経験的な現実主義の効用ないしは必要性をほとんど認めない
          • 軍人は歴史と理性に対する自由な信頼から学ぶ
        • 外的な障害に対する意思の力の勝利を称揚する
          • この点では自由主義的であるが、ファシズムは強力な軍事力の維持を心から支持する
            • 自由主義者は理想のために戦い、軍人が国家の安全の保証のために戦うのに対して、ファシズムは戦いのために戦う
        • 他のすべての社会組織の国家や政党への内的従属の存在への確信
          • 職業軍人についてはそれに固有のイデオロギー的色彩を持つべきと考える
        • ファシズムは自由主義より軍事組織を政治と無関係にしておくことはないが、国家から遊離した潜在的な権力の源泉の存在に対しては敵対視
        • 国民総武装に賛成
      • マルキシズムとの比較
        • マルクス主義の人間観
          • 軍人倫理の人間観とは根本的に対立
          • 基本的に善で合理的、悪しき制度によて堕落している、自然状態では平和である…これらが有史以前の人間
        • 人間同士の根本的な差別は否定するが、現段階においてはプロレタリアが進歩的
        • 歴史の綿密な研究
          • 正反合の繰り返しには循環的要素を認めるが、歴史の基本的な道筋は直線的
        • 闘争の本質への洞察
          • 軍人とは違い、階級闘争にのみ集中
        • 全ての重要な事件は経済的な力により決まる
          • 軍人は歴史における偶然と人間的自由の役割を容認
        • 一元論的な歴史観
          • 軍人は多言論的な歴史観
        • 程度の差はあれ、ユートピア的世界の実現で歴史が終息するという信念
          • 軍人の見方とは異なる
        • 経済力の重視
          • 軍人は武力を重視
        • 階級を基本的な集団とする…水平的
          • 軍人は民族国家を基本的な集団と考える…垂直的
        • 国家を階級闘争の手段と考える
        • 経済的帝国主義が国家間の戦争の源であり、唯一許される戦争は階級戦争のみであり、階級の道具としての軍事力のみ容認
        • 普遍的な軍隊の価値や形態の否認
          • すべての軍隊の性格は、階級的利益にそうことを求める
      • 保守主義との比較
        • 軍人倫理との親和性の高さ
          • 人間、社会、および歴史についての理論、人間関係における力の役割の認識、現存の制度の受容、限定的目標、遠大な計画に対する不審という点で、軍人倫理と一致
        • 他の3つと異なり、一元的ではなく、普遍主義的でない
          • すべての問題、すべての人為的諸制度に対して、同一の考えを適用しない
          • 種々の目標と価値を認める
        • 4つのうち保守主義だけは、軍事的機能の要求に発するところの軍人的諸価値との不可避な葛藤に、それ自身の論理により巻き込まれることはない
        • 軍事組織を規定すべき政治的・イデオロギー的方式を持たない
        • 軍人倫理vs自由主義、ファシズム、マルクス主義、の構図に対し、軍人倫理と保守主義の間には元来、類似性と両立性が存在する
客体的シビリアンコントロールの均衡
  • ミリタリープロフェッショナリズムと客体的シビリアンコントロールをできるだけ強めるような、文民軍人グループの権力分配は社会のイデオロギーと職業軍人倫理との両立性による
    • 反軍的イデオロギーの場合
      • 軍人はプロフェッショナリズムの犠牲にし、その社会に支配的な価値や態度を固守することによってのみ、実質的な政治権力を獲得する
      • ミリタリープロフェッショナリズムとシビリアンコントロールは権威や影響力を軍人が放棄し、軍人を一般社会の生活から切り離された力の弱い孤立した存在にすることによって極大化される
    • 親軍的イデオロギーの場合
      • 高度なミリタリープロフェッショナリズムと一般社会の両立に障害なし
      • 客体的シビリアンコントロールの実現は軍人の権力と社会のイデオロギーとの間にある適当な均衡が達成されるかどうかにかかっている
  • 多元的社会では権力は主義を和らげ、一定の教条的でかたくなな価値体形を信奉する人々は、権力からしめだされるということは「自明の理であ」り、融通性あり、喜んで調整に応じ、妥協する用意のある人だけが、広範な支持を得ることができる
    • つまり、権力は常に一定の犠牲により得られるものである
    • 権力の代償として軍人が支払う犠牲は、軍人倫理とイデオロギーとのギャップに依存
    • 反軍的な社会におかれた軍人は権力を獲得できるかもしれないが、職業軍人倫理はそうはいかない
      • 「社会主義者は勝利するかもしれないが、社会主義は決して勝利しないであろう」(ミヘルズ、『政党』)の援用
  • 権力とプロフェッショナリズム、イデオロギーの間の関係は流動的
    • 客体的シビリアンコントロールの本質である、権力とイデオロギーとの間の均衡は困難
    • いかなる専門的職業でも、その専門的職業に固有の抱負とそれが巻き込まれうる外部からの政策との間にある、一種の緊張関係がみられるが、軍人の場合は、危急の際に掌握すべき権力とその重大性ゆえに、よりこの緊張が強まる
    • 専門職業上の成功ゆえに、政治に関わり合うことが促進され、それ自身の没落を引き起こす
    • 専門職業的な能力と、専門職業への忠順という価値を追求する専門職業人と、権力それ自体を目的として追求する政治家とは、根本的に異なる人間であるが、どのような集団にも両方の要素が存在し、その結果、両者の緊張は切り離すことができない
  • 反軍的イデオロギー
    • 軍事安全保障の要求や権力への渇望が軍人やグループに政府内で支配的役割を果たす必要性を生じさせた
    • しかし、その達成は専門職業的考えの放棄によってのみ可能
      • しかも、これらの軍人やグループは最も際立った、政治と関わりを持った軍人たちであったので、彼らの態度は、非軍人グループによってしばしば軍人的思考の典型をなすものとみなされてきた
        • ex>ド・ゴール、ルーデンドルフ、マッカーサー
        • これらの軍人が往々にして「軍人精神」の代表的な例として考えられている
シビルミリタリーリレーションズの諸形態
  • 5つの異なった理想型に分類できる
    • 理論上、親軍/反軍イデオロギー 、軍部の権力の強弱、ミリタリープロフェッショナリズムの高低の2x2x2=8(通り)が考えられるが、以下の3通りは除外
      • 反軍的イデオロギーx軍部の強い権力x高度のミリタリープロフェッショナリズムはありえない
      • 親軍的イデオロギーx軍部の弱い政治権力x低いミリタリープロフェッショナリズムや親軍的イデオロギーx軍部の強い政治権力、低いミリタリープロフェッショナリズムは滅多にない
    • 反軍的イデオロギーx強い軍部の政治権力x低いレベルのミリタリープロフェッショナリズム
      • 一般にミリタリープロフェッショナリズムが後退している、より原始的な諸国において、あるいは、進歩した国々でも国家の安全保障に対する脅威が戸発的に増大したり、軍部がその政治権力を強化するときに認められる。
        • ex>日本やWW1のドイツ、WW2のアメリカ合衆国
    • 反軍的イデオロギーx弱い軍部の政治権力x低いレベルのミリタリープロフェッショナリズム
      • ここでは社会のイデオロギーが非常に強烈に追求されているため、軍部が政治権力をどれほど弱めても、軍部がイデオロギーの影響力を免れることが不可能であるようなところにのみ現れる
        • ex>近代の全体主義国家におけるシビルミリタリーリレーションズ、WW2のドイツ
    • 反軍的イデオロギーx弱い軍部の政治権力x高度のミリタリープロフェッショナリズム
      • 安全保障に対する脅威にほとんどさらされていない社会のシビルミリタリーリレーションズの形態
        • ex>南北戦争後のミリタリープロフェッショナリズムの台頭からWW2初期までのアメリカ
    • 親軍的イデオロギーx強い軍部の政治権力x高度のミリタリープロフェッショナリズム
      • 絶えず安全保障の脅威にさらされていて、軍人的価値に同情的なイデオロギーを持った社会は軍部に高水準の政治権力を許容することがあり、しかも依然として、ミリタリープロフェッショナリズムと客体的シビリアンコントロールを維持することがある
        • ex>ビスマルク-モルトケ時代のプロイセン=ドイツ
    • 親軍的イデオロギーx弱い軍部の政治権力x高度のミリタリープロフェッショナリズム
      • 安全保障の脅威から比較的免れていて、保守的イデオロギーあるいはその他の軍人の考え方に同情的なイデオロギーによって支配されている社会に現れる可能性がある
        • ex>20世紀のイギリス

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