2013年8月9日金曜日

『戦闘技術の歴史4 ナポレオンの時代編』レビュー

翻訳がひどいの一言に尽きる。

序盤から語訳が怪しいところがあって「原語表記しろよ」って思っていたが、海軍の章がとてつもなくひどかった。
端的に言えば、原語はcaptainと思われる語が「大尉」と訳されていて(captainを「大尉」と訳すのは陸軍の場合で、海軍の場合は「大佐」だし、おそらくこの時代のこの文脈では「艦長」が適切)、最初は「ウィロビー大佐」と訳されていたのに、次のページでは「ウィロビー大尉」となっていて、captainの訳をミスってるな、と気づくまで、この2つの人名が同一人物を指すということに気付かず、読んでて大混乱に陥った。
「彼(ウィロビー「大尉」)は大尉を[...]送り出し、[...]伝えさせた」って部分、「大尉が大尉を送り出し伝えさせた」ってまぁ、先任順とかでなきにしも非ずとはいえ、読んでておかしいって思うでしょ。
あと、戦闘図で「イギリス軍艦インフィジェニア」と言った舌の根の乾かぬうちに、「インフィジェニアの司令官アンリ・ランベール海軍大佐」って、司令官の名前をフランス人名風に訳してしまってたり(正しくは、「ヘンリー・ランバート海軍大佐」だろう。彼がフランス出身のイギリス海軍将校でない限りは)。

語訳のおかしさもさることながら、全体的な翻訳も直訳調で、「日本語訳」としての理解を妨げる。(「艦載砲はきわめて遠くまで球形弾を飛ばして、敵艦の骨組みを砕いて何千もの破片にすることができた。」という翻訳は、私には、仕事を放棄してるようにしか見えなかった。)

おそらく、原文がこういうやたらと「派手」で「回りくどい」表現を使っていて翻訳が難しいところだったとは思う。だけど、プロの翻訳家である以上、「日本語で読む読者のため」と理解を妨げるような表現は大胆にカットしてほしかった。Amazon.co.jpのカネゴンさんのレビュー(この方とはその昔、某掲示板でお見かけした記憶がある)の「翻訳者は内容を理解できていないのではないだろうか?」という言葉がかなりの説得力を持つくらいには直訳にすぎる翻訳だったし、監訳者も仕事をしてないと言っていいと思う。

日本語訳のほうが安いわけでもないので、今から読むなら、原著を購入されて読むことをお勧めしたい。私は、どうしようかな……。そのうち。





追記:
これは和んだ。

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