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2013年10月16日水曜日

国防軍とヒトラー I 引用1

エーベルトにとっては、僅か一年前に怒ったばかりのロシアの諸事件と同様のことが起こっていることは余りにも明白であったし、また余りにも恐ろしいことであった。すでにスパルタクス団は街頭に進出していた。ヴィルヘルム街の宰相官邸の中に坐ったままで、彼は、宮城にある根城から出てウンター・デン・リンデンを行進してゆく彼らのデモのざわめきを聞くことが出来た。ここで妥協したら、彼と彼の仲間はケレンスキーの二の舞を演ずることになるかも知れなかった。何故なら、そうしたら、スパルタクス団は、大した努力もせずに、協議会の指導権を握って、政府に既成事実を突きつけることが出来るであろうから。また、そうなればボルシェヴィズムが支配することなろうし、そして、そのような事態にたちいたった場合に、彼が独立社会民主党の支持をあてにすることができないことは明白であった。
このようにして、あの十一月九日の運命的な夜には、内乱の妖怪に取りつかれていたエーベルトは彼の弱々しい権威を支えるための手段を絶望的に探し求めていたのであった。彼が頼りにすることが出来るのはいかなる勢力であったろうか?将校団はどうだったろうか?回答は劇的な形で突然やって来た。宰相のテーブルの上には、彼とスパの大本営とを個人的に、秘密の裡につなぐ電話がのっていた。不幸なマックス・フォン・バーデンが皇帝に対して、帝位を救うためには彼自身を犠牲にするように、と説得するために最後の絶望的な努力を行なって、失敗したのもこの電話を使ってのことであった。今度はその同じ受話器がマックス公の後継者に希望の便りを伝えて来た。エーベルトはその時一人きりであった。窓は閉ざされ、カーテンは引かれていた。しかし、それらを通して街頭のデモの騒がしい叫びは聞こえて来た。突然、電話が鳴り出して、他のすべての雑音を消してしまった。エーベルトは受話器をふるえる手で取上げた。そして、彼は喜びの余りに泣き出さんばかりになった。
「もしもし、グレーナーですが。」
スパからのきびきびとしたど軍人の声は尋ねた。政府はドイツを無政府状態から守り、秩序を回復しようという意志がありますか?
「そうしたいと思っています。」とエーベルトは言った。「それでは最高司令部は軍隊の規律を維持し、それを平和の裡に帰還させます。」とグレーナーは答えた。エーベルとは尋ねた。最高司令部は兵士協議会に対してどのような態度をとられますか?彼らを友好的に取扱えという命令を出しました、というのがその返答であった。宰相は更に尋ねた。「我々がどうすることをお望みですか?」「最高司令部は、政府が将校団と協力してボルシェヴィズムの抑圧と軍規の維持にあたることを期待しています。また、軍隊への食糧の供給が確保され、交通運輸の妨害が排除されるようお願いします。」最後に、ヒンデンブルクが軍の指導者としてとどまることが報告された。
このようにして、電話を通じての五、六回の言葉のやりとりのうちに、敗北した軍隊と動揺した半革命的政権との間には一つの協定が結ばれた。そして、この協定はその双方の当事者を極左的革命勢力から救うことにはなったが、同時に、ワイマール共和国は、この協定が結ばれたことによって、誕生の時に既にその没落を運命づけられたのであった。

pp. 127 - 28

2013年9月16日月曜日

片山杜秀『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』(新潮選書、2012年)の感想など

第一次世界大戦に興味を持ちだした頃だろうか、私には長らく疑問に思っていたことがある。
それは「第一次世界大戦の『予示』ともいえる日露戦争を戦った日本は、その経験ゆえに、第一次世界大戦型の戦争への対応については世界的にリードする立場であってもよかったはずなのでは?」ということである。
もちろん、この疑問の後には、「それなのに、第二次世界大戦での日本軍のあり方を見る限り、全くそうではない」と続く。

あまり積極的に疑問の解消へ向かう努力をしていたわけではないが、無論、主に『歴史群像』などで知識を入れており(いわゆるミリタリー雑誌に属する部類であり学術的な文章でないことは最初に断っておく)、総力戦体制へ向けて産官学軍そろって第一次世界大戦を経験したヨーロッパから知識を吸収できるだけ吸収し、応用しようと努力したという知識は、不十分ながらも取り込んでいた。
例えば、学で言えば、東京・京都の両帝国大学に経済学部が第一次世界大戦後に設置されたのは総力戦に対応できる経済体制を構築するための研究を行うためであったというのは、山室信一『複合戦争と総力戦の断層―日本にとっての第一次世界大戦』(「レクチャー第一次世界大戦を考える」シリーズ、人文書院、2011年) の合評会に参加した際、山室先生がおっしゃっていたし、歴史群像 No.118 2013年4月号所収の田村尚也「国家総動員法への道 総力戦に備えよ!」は先述の通りであるが、逆にそれ故、コンパクトに、国家ぐるみでの総力戦体制へ向けて官をメインにヨーロッパに学んだ様子が描かれる。
産については、同じく歴史群像 No.94 2009年 4月号所収の中西正記「国家の動脈を確保せよ! 総力戦と鉄道行政」にてこれまたコンパクトに、官の主導のもと産の側で日本国内の鉄道が吸収・統合を繰り返し、合理化されていく様子を提示している。
歴史群像 No.121 2013年 10月号所収の田村尚也「「総力戦」から見た陸軍派閥抗争 皇道派vs. 統制派」ではタイトルの通り、軍内部での「総力戦」に対応するための軍政をめぐっての、端的に言ってしまえば「ごたごた」をまとめている(これもコンパクトに)。

しかし、どれもこれも、第一次世界大戦を話のスタートに据えており、「日露戦争→第一次世界大戦→戦間期(=総力戦体制構築期?)→第二次世界大戦」といった流れでは論述されていないし、それゆえ、私の疑問にも答えてくれてはいないように思う。

今回、紹介・感想を書いてみる片山杜秀『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』(新潮選書、2012年)はしかし、この疑問にある程度の答えを与えてくれたように思う。(先述の田村「「総力戦」から見た陸軍派閥抗争 皇道派vs. 統制派」でも参考文献のトップに挙げられていてネタ本と言ってもいいと思う)

日露戦争と第一次世界大戦の直接の連続性を述べているのが第2章の「物量戦としての青島戦役―日本陸軍の一九一四体験」である。
ドイツの事実上の植民地である青島の日本軍による占領では、砲兵=火力を重視し、旅順攻略の無謀な歩兵突撃も見られないし、太平洋戦争での精神力偏重な陸軍のあり方も見られない火砲という科学や合理性を重視した戦い方が展開される。これは日露戦争の旅順での苦戦を反面教師としていたのだと筆者は(乃木希典を弁護しつつ)主張している。日本軍は日露戦争に学んでいたというのだ。
次章「参謀本部の冷静な『観察』」では、ヨーロッパに派遣された観戦武官が第一次世界大戦の実相をどのように評価していたかを論じているが、日露戦争に関して言えば、日本軍の観戦武官は「ヨーロッパ諸国は日露戦争から誤った戦訓を引き出している」と評していたことが示される。これは主に、ベルクソンの「エラン・ヴィタール」の概念を援用して、無謀な突撃を繰り返したフランス軍を指している。
彼らは旅順攻略から当事者たる日本軍とは異なり「精神力で優位に立つ者が戦いを制する」という戦訓を引き出し、火力重視から歩兵による突撃重視へとドクトリンを組み替えたとまで書かれている。
この本には書かれていないが、史実としては結局、連合軍は火力・機械化戦力重視へと傾き第一次世界大戦では勝利を収め、フランス軍は第二次世界大戦でも火力は重視する軍備・ドクトリンを維持していいく(機械化兵力については第二次世界大戦型の運用を脱しきれなかったが)。また、敗れたドイツ軍は機械化戦力およびそれを駆使した運動戦重視の軍備・ドクトリンを整備していく。
青島占領の時期に「戦車」などはなかったため、これを排しても、なお、この時期の日本軍は日露戦争を見て逆に振れてしまった同時期の国々に対し、一歩先んじていたと言えるのではないだろうか。
筆者の日露戦争から第一次世界大戦への連続性の叙述はその後の「変質」との対比以上の重きを置いていないため、ここまで踏み込んだ叙述はしていないが。

第4章「タンネンベルク信仰の誕生」で読者に見取り図を展開した後、筆者は本題へと移る。

「皇道派」も「統制派」も、ヨーロッパ現地で学び取った「総力戦」へどう対応するかという問題について考えていたことは一致していた。対立点はその対応の方法だったのである。

「持たざる国は持たざる国らしくあるべきである」と考えたのが「皇道派」
「持たざる国を持てる国にすべきである」と考えたのが「統制派」

第5章では小畑敏四郎を引っ張り「皇道派」がいかに身の丈に合った戦争を行うかについて述べられている。
その方法とは端的に言えば、「タンネンベルク殲滅戦を再現する」こと。しかし、現地で「総力戦」を学んだ小畑は大国相手に日本陸軍がタンネンベルクを再現できるとは考えていなかった。
小畑らの考えは
1)「「持たざる国」日本よりもさらに「持たざる国」相手に」
2)「タンネンベルク殲滅戦を再現すること」
であったと筆者や再現してみせる。
(2)は『統帥綱領』に記載された一方、(1)については、事実上の「「持てる国」相手の戦争には勝てません」と述べるに等しく、「命ぜられればそれに粛々と従う」軍人の本分から外れるとして、「皇道派」の高級軍人の胸のうちに秘せられることとなったという。
筆者は『統帥綱領』に明記された(2)を「顕教」、(1)の留保を「密教」と称しているが、もっとわかりやすく「ホンネとタテマエ」でも十分に意を尽くしているであろう。

第6章では、この「皇道派」に最終的に取って代わった「統制派」の思想を石原莞爾を引いて説明する。
「持たざる国」を「持てる国」にするのに石原が手を付けたのが満州。この地の資源を開発し、産業を育成し、日本を「持てる国」にする。それまでは大戦争は行わない。それが石原の考えであった。石原の誇大妄想気味の試算でも30年以上かかる大仕事だった。
が、満州は石原の手から滑り落ちることとなる。

ここで、「皇道派」のつくりだした『統帥綱領』でその密教を知らず、かつ、日本を「持てる国」にできてもいない「統制派」が陸軍の実権を握り、太平洋戦争へ向かうという捩れた構図が出来上がるのである。

続いて、筆者は本書の表題たる「未完のファシズム」として、明治憲法下での総力戦体制構築の困難さを説明する。
端的に言えば、明治憲法のシステムは権力のバランス重視・一極集中を避けるため、と言えば聞こえはいいが、総力戦には向いていないシステムであったのである。
有名な陸海軍間のみならず、閣僚間にも、そして、軍政間にも、ろくな協力・統制関係もない。
それでも、それまでの国家存亡をかけた戦争、特に日露戦争を戦えたのはなぜか。それは「元老」という明治維新の立役者がいたからであった。これについては特に筆者だではなく、『太平洋戦争 決定版 (1) 「日米激突」への半世紀 』(歴史群像シリーズ)所収の黒野耐「「合意なき国家」大日本帝国の迷走」でも指摘されていることではある。

第8章では中柴末純を中心に「玉砕への道」を示す。
中柴はかの有名な「生きて虜囚の辱を受けず」を含む『戦陣訓』の起草者の一人と言われている。
またもや彼とて、工兵出身の合理主義者で総力戦をよく知っている。
中柴にとって「皇道派」も「統制派」も意味がなかった。先述の通り、軍が外交も内政も主導できない体制下では戦争のタイミングも相手も選べないし、喧嘩は相手が売ってくるものかもしれない。
では、どうやって勝つか。答えは「敵の前で死んでみせることで相手を戦慄させること」だった。
では、なぜ死ねるのか。筆者は思想的な系譜をたどっているが、私なりの言葉で書けば「天皇という日本人の中心がある限り、個は死んでも集団は死なない」からだった。

終章は補論といったところ。


全体として敬体の読みやすい文章であり、内容も一般読者を想定してか、かなり咀嚼されており、さらっと読めた。
内容も私には説得的で、「玉砕」への道を精神史という観点から説明しようという本書の試みは私にとってはほぼ成功しているように思えた。
「皇道派」にせよ「統制派」にせよ「玉砕派」(←今、私が付けた)にせよ、彼らの中に走っているのは「彼らなりの」という留保が付くものの合理性であり、その結末にあるのが合理性を超越した精神主義であったことは皮肉としか言いようがない。
ただ、この本の説明だけで、「玉砕」への道を納得してはいけないのだろうな、という気もする。というのも、当然、精神史の説明でしかないからだ。
先述した『太平洋戦争 決定版 (1) 「日米激突」への半世紀 』(歴史群像シリーズ)に所収されている片岡徹也「日本陸海軍の用兵思想"お坊ちゃん"と"放蕩息子"」では"放蕩息子"たる日本陸軍がいかに、プロイセン=ドイツ参謀本部からそのエッセンスを学び損ねたかを論じ、太平洋戦争は兵学上の兄弟の戦いであったと主張されている。
先述の田村「「総力戦」から見た陸軍派閥抗争 皇道派vs. 統制派」では、山梨軍縮と宇垣軍縮と、同じ「軍縮」であっても、「皇道派」に沿った前者と「統制派」に沿った後者とでは性質が異なるものであったとし、どっち付かずの中途半端なものであったと結論付け、軍政のあり方も視野に収めている。
そして何より、第一次世界大戦後の日本の軍人がそこまで「総力戦」、「持てる国」、「持たざる国」といった問題に向き合わざるを得なかったかの説明がされていなかったように思う。自分がすでに述べた山室信一『複合戦争と総力戦の断層―日本にとっての第一次世界大戦』(「レクチャー第一次世界大戦を考える」シリーズ、人文書院、2011年)をすでに読んだり、その合評会に参加していたためだろうか、「大戦はまた起こるし、それに日本は巻き込まれる」という当時の日本軍部などの強迫観念が本書全体を重低音のように響きながら、説明がされていなかったように感じてしまった。

あとは、話が日本陸軍のみで進められており、海軍への言及がなかったことであろうか。「十死零生」の「特攻」を始めたのは海軍であったことを考えると、結論は「中柴の延長線上に「特攻」の思想もあります」でもいいので、本書はそのことまで言及してもよかったのではないだろうか。

『戦争社会学ブックガイド: 現代世界を読み解く132冊』をちょこちょこ読んでいるのであるが、この中で印象的なことの1つとして「戦争は平時との断絶のみではなく、連続性である」ということがある。今回の本にも当てはまるなぁ、というのが漠然とした感想である。戦間期の「総力戦」研究とそれへの対応はもちろんのこと、『ブックガイド』のどこかで述べられていた「戦時の総動員体制が戦後の高度経済成長を実現した」という部分は石原の1970年代に「持てる国」にする「荒唐無稽」な計画も、ひょっとしたら、あながち間違いとは言えないのかも、とか思った。
無論、満州事変以降、孤立を深めて世界経済から切り離されてどんどん苦しくなっていく戦前日本と西側の資本主義経済の世界の一員として生きていくことを決めてその中で繁栄していく日本とを比較するのは前提条件としてあまりにも違いすぎるのだが。

2013年8月9日金曜日

『戦闘技術の歴史4 ナポレオンの時代編』レビュー

翻訳がひどいの一言に尽きる。

序盤から語訳が怪しいところがあって「原語表記しろよ」って思っていたが、海軍の章がとてつもなくひどかった。
端的に言えば、原語はcaptainと思われる語が「大尉」と訳されていて(captainを「大尉」と訳すのは陸軍の場合で、海軍の場合は「大佐」だし、おそらくこの時代のこの文脈では「艦長」が適切)、最初は「ウィロビー大佐」と訳されていたのに、次のページでは「ウィロビー大尉」となっていて、captainの訳をミスってるな、と気づくまで、この2つの人名が同一人物を指すということに気付かず、読んでて大混乱に陥った。
「彼(ウィロビー「大尉」)は大尉を[...]送り出し、[...]伝えさせた」って部分、「大尉が大尉を送り出し伝えさせた」ってまぁ、先任順とかでなきにしも非ずとはいえ、読んでておかしいって思うでしょ。
あと、戦闘図で「イギリス軍艦インフィジェニア」と言った舌の根の乾かぬうちに、「インフィジェニアの司令官アンリ・ランベール海軍大佐」って、司令官の名前をフランス人名風に訳してしまってたり(正しくは、「ヘンリー・ランバート海軍大佐」だろう。彼がフランス出身のイギリス海軍将校でない限りは)。

語訳のおかしさもさることながら、全体的な翻訳も直訳調で、「日本語訳」としての理解を妨げる。(「艦載砲はきわめて遠くまで球形弾を飛ばして、敵艦の骨組みを砕いて何千もの破片にすることができた。」という翻訳は、私には、仕事を放棄してるようにしか見えなかった。)

おそらく、原文がこういうやたらと「派手」で「回りくどい」表現を使っていて翻訳が難しいところだったとは思う。だけど、プロの翻訳家である以上、「日本語で読む読者のため」と理解を妨げるような表現は大胆にカットしてほしかった。Amazon.co.jpのカネゴンさんのレビュー(この方とはその昔、某掲示板でお見かけした記憶がある)の「翻訳者は内容を理解できていないのではないだろうか?」という言葉がかなりの説得力を持つくらいには直訳にすぎる翻訳だったし、監訳者も仕事をしてないと言っていいと思う。

日本語訳のほうが安いわけでもないので、今から読むなら、原著を購入されて読むことをお勧めしたい。私は、どうしようかな……。そのうち。





追記:
これは和んだ。

2013年7月29日月曜日

歩兵方陣vs(重)騎兵突撃についての引用

引用元: 『戦闘技術の歴史 4 ナポレオンの時代編 AD1792-AD1815』 p.171
([]内は引用者による注)

カトル・ブラ[の戦い]は、騎兵の強さと弱さの両面をはっきりと示す事例だ。しかし、カトル・ブラ、そしてその後のワーテルローで、フランス胸甲騎兵の襲撃を持ちこたえた強靭なイギリス方陣のイメージは、すべての歩兵大隊は方陣を組むべきで、方陣は騎兵攻撃に耐えられるという誤った印象を与えてしまう。これは、明らかに間違った考え方だ。イギリス連隊がカトル・ブラで組んだ方陣を、当時の標準的な方陣と考えてはいけない。ナポレオン戦争の時のイギリス歩兵は、当時の最強歩兵だった。彼らの指揮と訓練はほかに類を見ないもので、頑強に陣地を守るという彼らの評判が、カトル・ブラでの素晴らしい防御で充分に証明されている。
実際に、ナポレオン戦争のあいだ、フランス騎兵も同盟国側の騎兵も、歩兵の方陣を崩している。単にある隊形を組むだけでは、騎兵攻撃を撃退することはできない。頑健な精神に並外れた訓練、冷静な勇気がなければ、押し寄せてくる重騎兵の攻撃を前にして、歩兵方陣を断固として持ちこたえることはできない。そして、そのすべてがあっても、部隊が圧倒されることもあった。つまり、イギリス歩兵がカトル・ブラ、そしてその後ワーテルローで成し遂げたことは、とてつもない偉業だったと認識しなければならないのだ。

2012年2月29日水曜日

ハンチントン『軍人と国家』-3

権力、プロフェッショナリズムおよびイデオロギー―シビル・ミリタリー・リレーションズの理論
シビリアン・コントロールの諸形態
  • 「シビリアンコントロール」は未定義の概念
    • ここでは「いかにして軍人の権力を極小にしるうか」を定義の基本的な問題とする
  • 2通りの答え=主体的シビリアンコントロールと客体的シビリアンコントロール
  • 主体的シビリアンコントロール
    • 文民グループの権力の極大化
      • しかし、文民グループは多数+多種多様ゆえに利害不一致→軍部に対して全体として権力の極大化が不可能
    • シビリアンコントロールの一般的概念は任意の文民グループの利益と同一視される
      • ゆえに主体的シビリアンコントロールは各文民グループ間の権力関係を含む
      • 常にどの文民グループがこの統制を行おうとしているかを問うことが必要
    • ごく最近のことを除けば、西欧社会においてはシビリアンコントロールはこの主体的な意味においてのみ存在してきた
    • 事実、主体的シビリアンコントロールは専門職業的な将校団が存在しない場合に可能なシビリアンコントロールの唯一の形態
  • 主体的シビリアンコントロールの種類
    • 政治制度によるシビリアンコントロール
      • 17c-18cの英米では軍隊は国王の統制下
      • 「シビリアンコントロール」というスローガンは国王に対して権力を増大させる手段として議会グループにより採用
        • 国王も議会同様に文民であるゆえ、一般的なシビリアンコントロールではなく、軍隊に対する議会のコントロールを極大化する意
        • また、国王から権力を奪取する手段
        • 現代のアメリカも類似=議会vs大統領府
    • 社会階級によるシビリアンコントロール
      • 18c-19cのヨーロッパ貴族vsブルジョワジーの軍隊のコントロールをめぐる闘争
    • 立憲形態によるシビリアンコントロール
      • シビリアンコントロールを特定の文民の利益と同様に同一視するという考え方の広い適用は主に民主制などの特殊な立憲形態のみが、シビリアンコントロールを保証しうるという主張がなされる場合にみられる(ややこしい日本語!)
      • シビリアンコントロール=民主政体、軍部の支配=絶対主義的/全体主義的政体
        • 民主主義国家における政策→説得と妥協の産物
        • 絶対主義国家における政策→力と威圧、脅迫の産物
        • したがって、(軍部の力 in 民主主義国家) < (軍部の力 in 全体主義国家)
      • …という主張は必ずしも真実ではない
        • 民主主義国家における軍部
          • 民主的な政府や政策の立法過程と諸制度によってシビリアンコントロールの基礎を危うくし、大きな政治権力を獲得しうる(ex. アメリカ in WW2)
        • 全体主義体制における軍部
          • 軍部の権力の弱化がありうる
            • 互いに競争的な単位に将校団の分割
            • 党派的な軍隊や特殊な軍隊(ex. 武装SS、ソ連内務省)の組織
            • 独立の指揮系統を持った軍隊の全国浸透
          • テロや陰謀や監視や暴力は全体主義国家における統治の方法
            • これらは全体主義国家で文民が軍隊を統制する手段
            • 十全に行使されたならば、軍部の政治権力を抹殺しうる(ex. ドイツ in WW2)
        • したがって主体的シビリアンコントロールは特定の立憲制度の独占物ではない
    • 軍事専門職業の発生は、シビルミリタリーリレーションズの問題を変形させ、軍隊に対する支配権の極大化を志向する文民グループに困難を強いた
    • 競合の文民グループのみならず、新しく、独立の機能を持った軍の要求とも対峙する必要あり
    • 主体的なシビリアンコントロールの特殊な形態の持続の主張のためには、これらの要求が否定ないし変質させられる必要性
      • どちらもされなければ、主体的シビリアンコントロールは不可能
    • 軍隊の機能上の要求と軍の外の社会との間の関係を調整するいくつかの新原理が必要
    • 特定の文民グループの手段的な価値に過ぎない限り、どの意義に関しても共通の同意を取り付けることは不可能
    • このことは、「シビリアンコントロール」が18c、19cにしばしば登場するが、十分に定義されることがなかったことの歴史的事実の説明をなす
  • 客体的シビリアンコントロール
    • 生んじ専門職業の発生による主体的シビリアンコントロールの旧式化後のシビリアンコントロール
    • ミリタリープロフェッショナリズムの極大化
      • 将校団の成員に専門職業的な振る舞いをさせるための軍人グループと文民グループの間の政治権力の分配
    • 主体的シビリアンコントロールとは正反対
      • 軍人を軍人たらしめ、彼らを国家の道具たらしめることによる目的達成
        • 主体的シビリアンコントロール…軍人の文民化、彼らを国家の鑑たらしめることによる目的達成
      • 客体的シビリアンコントロールのアンチテーゼ…政治への軍人の参画
        • 軍部が制度的、階級的、立憲的な政府に漸次巻き込まれるにつれて、それだけ弱体化する
          • 主体的シビリアンコントロールはこれを前提
      • 本質…自律的なミリタリープロフェッショナリズムの認識
        • 主体的シビリアンコントロールの本質…軍の独自の活動分野の否定
      • 客体的シビリアンコントロールへの要求は軍隊の専門職業化に由来
        • 主体的シビリアンコントロール
    • 軍部の権力を最小限に留めるという要素はどちらのシビリアンコントロールにも共通
      • 客体的シビリアンコントロールでは軍の専門職業化、政治的安定と中立により達成
        • 全ての文民グループにとって軍部の政治権力のレベルを最低限まで下げることを意味する
          • かつ、専門職業の存立に必要な権力の本質的要素を保持させる
        • 高度に専門職業化された将校団は、国家内部で合法的権威を保持している文民グループの願望を満たす用意がある
        • このことが結果的には、多種多様な文民グループの間の政治権力の配分とは無関係に軍部の政治権限の限界を規定する
    • プロフェッショナリズムが最極大化される点を超えて軍部の権力が弱化させられる場合
      • 特定の文民グループの利益に寄与し
      • 文民グループ間の権力闘争においてそのグループの権力を増大させることとなる
    • ミリタリープロフェッショナリズムを最も促進する政治権力の分配は、軍の権力が、文民グループのうち任意のものに肩入れされず、弱化させることが可能な最低点を決めるものである
    • このような理由から、シビリアンコントロールの客体的定義は
      • 政治的に中立であらゆる社会集団が認めるようなシビリアンコントロールについて唯一の具体的基準を含み
    • 主体的なシビリアンコントロールの定義付けは、シビリアンコントロールと軍事的安全保障との間の構想を前提としている(シビリアンコントロール or 軍事的安全保障)
      • 軍事的不安がシビリアンコントロールを不可能にすると主張する特定の文民グループの信奉者によって一般に認められてきた
      • 安全保障上の脅威が増大するにつれて、軍事的要求も増大し、それに対抗して、軍部に対する文民の統制権が弱まるということを言おうとしたに過ぎない
      • 軍事的安全保障を達成するのに必要な手段はシビリアンコントロールの基礎を危うくするものとみなされる(諸刃の剣)
      • 主体的シビリアンコントロールを強化しようとする努力による軍事的安全保障の基礎を危うくする例(後の引用参照)
    • シビリアンコントロールが客体的な意味において定義されるならば軍事的安全保障という目標との間の矛盾は存在しない
      • あらゆる文民グループにとって可能な最低限まで軍部の権限を弱化させる
      • 軍事的安全保障を達成する可能性をできるだけ大きくする
    • 客体的シビリアンコントロールは軍事専門職業の登場以降に出現
      • 客体的シビリアンコントロールの達成は、主体的シビリアンコントロールを依然として目標とする文民グループの傾向によって阻害される(「文民グループは、政治的に中立な将校団を全然容認したがらない。彼らは、将校団が彼ら自身の利益と原理に服従することを強要し続ける。」)
      • その結果、高水準の客体的シビリアンコントロールは近代的な西欧社会においてさえもまれな現象
例えば、文民グループが、国家政策についての軍部自身の考え方を持った個別の軍事専門職業の存在を認めなかったために、彼らは、しばしば軍部の権力の弱化が平和を維持するのに必要であると考えた。しかしながら、そのような軍部の権力の縮小は、しばしばよりいっそう好戦的な文民グループの権力を増大させる結果をもたらした。その結果、軍部の権力を減少させることによって戦争の危険をできるだけ少なくしようと試みたそれらの文民グループは、しばしば彼らがまさに回避しようと務めていたことをかえって促進させることになった。第二次世界大戦の直前の数年間に日本を除いて、その後のすべての交戦国で軍部の政治権力の組織的な縮小がみられたり、あるいは冷戦の機器の度合いがソビエト同盟の将軍たちの政治権力とは逆の方向に変化するようにみられるといった状態は決して偶然の出来事ではない
シビルミリタリーリレーションズの2つのレベル
  • 2つのレベル
    • 権力
      • 社会内部の文民グループとの関連における将校団の権力
      • 軍人の権力と文民の権力を測定するための尺度が必要
    • イデオロギー
      • 社会において支配的な政治的イデオロギーに対して職業軍人倫理が両立しうるか
      • 職業軍人倫理が多様な社会的意見に対し、どこまで適合しているかについて若干の考察が必要
  • 権力=他の人々の行動を統制しうる能力
    • 少なくとも2つの次元
      • 権力の大きさ(ある人間の特定の種類の行動が、他の人間によってどこまで統制されるか)
      • 権力の範囲ないしは所在(他の個人ないしはグループによって影響される行動の種類)
    • 権力の2つの形態
      • フォーマルな権威
        • 一定の社会構造の中で占めるそれぞれの地位を基礎にした、ある人間の他の人間に対する統制を含む
        • 属人的なものではなく、地位や職位に付属するもの
        • 一定の構成された権力、ないしは合法的な権力
        • 持続性を持った形態の関係であり、その関係に含まれる諸個人が入れ替わっても比較的一定したまま持続する関係
      • インフォーマルな影響力
        • 権威では回収し切れない権力の側面
        • 特定の個人やグループに属するもので、地位や役割に付随するものではない
    • 権威
      • シビルミリタリーリレーションズにおける権威のパターン分析の基準…軍人及び文民の各グループの権威の相対的なレベル、相対的な統一性、相対的な権力の範囲
        • あるグループの権威のレベルが高いほど、そのグループの統一性は大きく、権威の範囲も広く、強力なものとなる
        • 相対的なレベル
          • グループが政府の権威のヒエラルヒーの中で占める地位に関係
          • 将校団の権威のパターン
            • タテの統制:軍部の権威が従属的なレベルに格下げされるまでに軍部に対して行使(突然出てきた。謎。)
            • 軍or軍の指導者が軍の最高権力を行使する場合:最も高い
            • 軍が他の政府組織に対する権威を持たず、その逆もない場合:上より若干低いレベルの権威
              • 2つの並行的な権威の組織
                • 文民の権威と軍人の権威
            • 将校団が強力な究極的権威をもつただひとつの他組織に対してのみ従属している場合(将校団が最高権力に直接近づく道が開かれている場合)
              • その政府組織の機構の中で次第に一層従属させられる可能性あり
              • 一般にはそのような従属は極端に強まることはなく、
              • 通常は将校団と最高権力の間にはただ1つの権威のレベルがあるにすぎない
                • この1つのレベルは普通、文民の省大臣という形を取り、
                • このようなレベルの軍部の権威は大臣の統制と呼ぶことができる
        • 相対的な統一性
          • 一定のグループが他のグループとの関係において構造的に統合されている程度による
          • 統一性が相対的にある側のほうが有利
            • 3軍がバラバラな場合よりも、統合参謀本部のようなものがある方が、3軍を互いに競わせて漁夫の利を得るということを阻止することができる
        • 権威の範囲
          • そのグループが権力を行使することが公式に認められている価値の種類と形態に関係する
          • 軍人グループの権威は通常、軍事問題に限定
          • 水平的なシビリアンコントロール
            • 「軍が政府部内のほぼ同一レベルの文民機関ないしはグループの水平的な活動によって一定の範囲内に限定される程度におおいて、軍部に対して行使される」
    • 影響力
      • 評価の4つの尺度
        • 将校団とその指導者の集団的親密性
          • あるグループの影響力を図る上で、他の有力なグループや個人との親密性のその程度と性質
          • 将校団については3つの型
            • 軍務以前の親密性
              • もし、将校の大多数が特定の階級出身であった場合、その階級から受ける影響力は増大する
            • 議会の委員会との特別の関係や軍が消費する物資を生産している産業との特別な関係から生じる親密性
            • 退役後の親密性の発展
              • もし退役した将校が、通常みられるように、ある特殊な種類の職業に就いたり、その国の特定の地域に定住するようなパターン
        • 将校団とその指導者の権威に従属した経済的ならびに人的資源
          • 物的、人的資源が軍事目的に割り当てられる割合が大きいほど将校団とその指導者の影響力は大きくなる
            • ただし、軍の権威に従属した資源の増減が必ずしもその権威自体に何らかの変化をもたらすとは限らない
              • 軍の権威のレベル、統一性、範囲は軍の統制下の資源に変化が起こっても一定のまま持続
        • 将校団と他のグループとのヒエラルヒー的相互交流
          • 非軍人的権力機構の中で権威ある地位に将校団のメンバーが就けば、軍人の影響力は強化される(旧日本軍のパターンか?)
          • 逆に、非軍人的個人の影響力が定型的に決められた将校団内部に強く浸透する度合いに応じて軍人の影響力は弱化される(ナチスドイツ?)
        • 将校団とその指導者の威信と人気
  • イデオロギー
    • 文民グループにもいろいろあるので、ただひとつの文民的価値vs軍人的価値という二項対立は不可能
      • 軍人的価値は具体的かつ永続的、普遍的であるが、「シビリアン(civilian)」という語は単に非軍事的(nonmilitary)と言っているに過ぎない
    • 軍人倫理を文民倫理の一種である政治的イデオロギーにみられる代表的な4つと比較
      • 政治的イデオロギーは1組になった価値であり、国家の問題をめぐって志向された種々の態度である。
      • 自由主義との比較(原則、自由主義(者)を主語とする)
        • 自由主義の本質は個人主義にあり、個人の自由に与える政治的、経済的、社会的束縛に反対
          • 軍人倫理は(人間が)性悪であり、弱く、非合理であると主張し、人間は集団に従属しなければならないと主張
        • 人間同士の関係は自然状態において平和的
          • 軍人倫理は人間関係は自然状態において対立関係
        • ある企業の成功は個人のエネルギーの最大限の発露
          • 軍人にとっては服従と専門化による賜物
        • 人間性は素直なもので、教育や適当な社会制度によって改善しうる
        • 通常、進歩の存在を信じ、歴史の意義をできるだけ小さく評価する
        • 権力の存在の否定、その重要性の軽視ないしは権力を悪とみなす
          • 軍人は人間関係における権力の重要性を強調
        • 自由主義は国家の安全保障そのものを実在するものと考える
          • 軍人は国家の安全保障はいつも脅かされていると考える
        • 自由主義的思考は概して、経済や経済的福祉に感心を持ち、
        • 自由主義は大規模な軍事力や勢力均衡外交や軍事同盟に反対し、
        • 平和は国際法や国際司法裁判所、国際的機構といった制度的手段により獲得できると考える
        • 自由主義者は自由主義的理念の発展のための戦争には賛成
          • 国策の手段としての戦争は非道徳的であるが、正義と自由のための戦争は道徳的
          • 軍人は、抽象的に戦争を受け入れるが、その特殊な表現には反対
        • 自由主義は一般に、平和や立憲政治にとっての脅威として、軍備や常備軍に反対
          • 軍事機構が必要であるとしても、自由主義的原理を反映している軍事機構である必要があると考える
            • 自由主義にとってシビリアンコントロール=軍事組織に自由主義的考え方が反映されたもの
          • 国家の防衛はすべてのものの責任であり、少数者により独占されるものではない
      • ファシズムとの比較
        • ある点では類似するが、ひとつの根本的差異が存在
        • ファシストは軍人が出来るだけ効率良く戦うことを生存の事実として受け入れているところを、生存の最高の価値として賞賛する
        • ファシストは闘争を最高の人間活動として賛美する
        • 国家や政党を道徳的価値の具体化、道徳性の究極の源泉として迎える
          • 軍人倫理は民族国家をひとつの独立の単位として容認する
        • 戦争と暴力の美化
          • 軍人の思考は戦争を容認する
        • 力それ自体をひとつの目的として礼賛する
          • 軍人は力の必要性と行使を認める
        • 指導者の思考の権力と能力の強調、指導者の意思に対する服従を絶対的な義務として強調
          • 軍人倫理は社会におけるリーダシップと規律の必要性を認める
        • 人間性と歴史に関して、ファシストは選ばれた国民ないしは民族の生まれながらの優秀性、指導者の固有の天才及び思考の美徳が存在すると信じる
          • 軍人は人間の普遍性を強調し、軍人の思考はすべての人間を疑ってかかる
        • 直感の重視
          • 秩序だった知識や実際的、経験的な現実主義の効用ないしは必要性をほとんど認めない
          • 軍人は歴史と理性に対する自由な信頼から学ぶ
        • 外的な障害に対する意思の力の勝利を称揚する
          • この点では自由主義的であるが、ファシズムは強力な軍事力の維持を心から支持する
            • 自由主義者は理想のために戦い、軍人が国家の安全の保証のために戦うのに対して、ファシズムは戦いのために戦う
        • 他のすべての社会組織の国家や政党への内的従属の存在への確信
          • 職業軍人についてはそれに固有のイデオロギー的色彩を持つべきと考える
        • ファシズムは自由主義より軍事組織を政治と無関係にしておくことはないが、国家から遊離した潜在的な権力の源泉の存在に対しては敵対視
        • 国民総武装に賛成
      • マルキシズムとの比較
        • マルクス主義の人間観
          • 軍人倫理の人間観とは根本的に対立
          • 基本的に善で合理的、悪しき制度によて堕落している、自然状態では平和である…これらが有史以前の人間
        • 人間同士の根本的な差別は否定するが、現段階においてはプロレタリアが進歩的
        • 歴史の綿密な研究
          • 正反合の繰り返しには循環的要素を認めるが、歴史の基本的な道筋は直線的
        • 闘争の本質への洞察
          • 軍人とは違い、階級闘争にのみ集中
        • 全ての重要な事件は経済的な力により決まる
          • 軍人は歴史における偶然と人間的自由の役割を容認
        • 一元論的な歴史観
          • 軍人は多言論的な歴史観
        • 程度の差はあれ、ユートピア的世界の実現で歴史が終息するという信念
          • 軍人の見方とは異なる
        • 経済力の重視
          • 軍人は武力を重視
        • 階級を基本的な集団とする…水平的
          • 軍人は民族国家を基本的な集団と考える…垂直的
        • 国家を階級闘争の手段と考える
        • 経済的帝国主義が国家間の戦争の源であり、唯一許される戦争は階級戦争のみであり、階級の道具としての軍事力のみ容認
        • 普遍的な軍隊の価値や形態の否認
          • すべての軍隊の性格は、階級的利益にそうことを求める
      • 保守主義との比較
        • 軍人倫理との親和性の高さ
          • 人間、社会、および歴史についての理論、人間関係における力の役割の認識、現存の制度の受容、限定的目標、遠大な計画に対する不審という点で、軍人倫理と一致
        • 他の3つと異なり、一元的ではなく、普遍主義的でない
          • すべての問題、すべての人為的諸制度に対して、同一の考えを適用しない
          • 種々の目標と価値を認める
        • 4つのうち保守主義だけは、軍事的機能の要求に発するところの軍人的諸価値との不可避な葛藤に、それ自身の論理により巻き込まれることはない
        • 軍事組織を規定すべき政治的・イデオロギー的方式を持たない
        • 軍人倫理vs自由主義、ファシズム、マルクス主義、の構図に対し、軍人倫理と保守主義の間には元来、類似性と両立性が存在する
客体的シビリアンコントロールの均衡
  • ミリタリープロフェッショナリズムと客体的シビリアンコントロールをできるだけ強めるような、文民軍人グループの権力分配は社会のイデオロギーと職業軍人倫理との両立性による
    • 反軍的イデオロギーの場合
      • 軍人はプロフェッショナリズムの犠牲にし、その社会に支配的な価値や態度を固守することによってのみ、実質的な政治権力を獲得する
      • ミリタリープロフェッショナリズムとシビリアンコントロールは権威や影響力を軍人が放棄し、軍人を一般社会の生活から切り離された力の弱い孤立した存在にすることによって極大化される
    • 親軍的イデオロギーの場合
      • 高度なミリタリープロフェッショナリズムと一般社会の両立に障害なし
      • 客体的シビリアンコントロールの実現は軍人の権力と社会のイデオロギーとの間にある適当な均衡が達成されるかどうかにかかっている
  • 多元的社会では権力は主義を和らげ、一定の教条的でかたくなな価値体形を信奉する人々は、権力からしめだされるということは「自明の理であ」り、融通性あり、喜んで調整に応じ、妥協する用意のある人だけが、広範な支持を得ることができる
    • つまり、権力は常に一定の犠牲により得られるものである
    • 権力の代償として軍人が支払う犠牲は、軍人倫理とイデオロギーとのギャップに依存
    • 反軍的な社会におかれた軍人は権力を獲得できるかもしれないが、職業軍人倫理はそうはいかない
      • 「社会主義者は勝利するかもしれないが、社会主義は決して勝利しないであろう」(ミヘルズ、『政党』)の援用
  • 権力とプロフェッショナリズム、イデオロギーの間の関係は流動的
    • 客体的シビリアンコントロールの本質である、権力とイデオロギーとの間の均衡は困難
    • いかなる専門的職業でも、その専門的職業に固有の抱負とそれが巻き込まれうる外部からの政策との間にある、一種の緊張関係がみられるが、軍人の場合は、危急の際に掌握すべき権力とその重大性ゆえに、よりこの緊張が強まる
    • 専門職業上の成功ゆえに、政治に関わり合うことが促進され、それ自身の没落を引き起こす
    • 専門職業的な能力と、専門職業への忠順という価値を追求する専門職業人と、権力それ自体を目的として追求する政治家とは、根本的に異なる人間であるが、どのような集団にも両方の要素が存在し、その結果、両者の緊張は切り離すことができない
  • 反軍的イデオロギー
    • 軍事安全保障の要求や権力への渇望が軍人やグループに政府内で支配的役割を果たす必要性を生じさせた
    • しかし、その達成は専門職業的考えの放棄によってのみ可能
      • しかも、これらの軍人やグループは最も際立った、政治と関わりを持った軍人たちであったので、彼らの態度は、非軍人グループによってしばしば軍人的思考の典型をなすものとみなされてきた
        • ex>ド・ゴール、ルーデンドルフ、マッカーサー
        • これらの軍人が往々にして「軍人精神」の代表的な例として考えられている
シビルミリタリーリレーションズの諸形態
  • 5つの異なった理想型に分類できる
    • 理論上、親軍/反軍イデオロギー 、軍部の権力の強弱、ミリタリープロフェッショナリズムの高低の2x2x2=8(通り)が考えられるが、以下の3通りは除外
      • 反軍的イデオロギーx軍部の強い権力x高度のミリタリープロフェッショナリズムはありえない
      • 親軍的イデオロギーx軍部の弱い政治権力x低いミリタリープロフェッショナリズムや親軍的イデオロギーx軍部の強い政治権力、低いミリタリープロフェッショナリズムは滅多にない
    • 反軍的イデオロギーx強い軍部の政治権力x低いレベルのミリタリープロフェッショナリズム
      • 一般にミリタリープロフェッショナリズムが後退している、より原始的な諸国において、あるいは、進歩した国々でも国家の安全保障に対する脅威が戸発的に増大したり、軍部がその政治権力を強化するときに認められる。
        • ex>日本やWW1のドイツ、WW2のアメリカ合衆国
    • 反軍的イデオロギーx弱い軍部の政治権力x低いレベルのミリタリープロフェッショナリズム
      • ここでは社会のイデオロギーが非常に強烈に追求されているため、軍部が政治権力をどれほど弱めても、軍部がイデオロギーの影響力を免れることが不可能であるようなところにのみ現れる
        • ex>近代の全体主義国家におけるシビルミリタリーリレーションズ、WW2のドイツ
    • 反軍的イデオロギーx弱い軍部の政治権力x高度のミリタリープロフェッショナリズム
      • 安全保障に対する脅威にほとんどさらされていない社会のシビルミリタリーリレーションズの形態
        • ex>南北戦争後のミリタリープロフェッショナリズムの台頭からWW2初期までのアメリカ
    • 親軍的イデオロギーx強い軍部の政治権力x高度のミリタリープロフェッショナリズム
      • 絶えず安全保障の脅威にさらされていて、軍人的価値に同情的なイデオロギーを持った社会は軍部に高水準の政治権力を許容することがあり、しかも依然として、ミリタリープロフェッショナリズムと客体的シビリアンコントロールを維持することがある
        • ex>ビスマルク-モルトケ時代のプロイセン=ドイツ
    • 親軍的イデオロギーx弱い軍部の政治権力x高度のミリタリープロフェッショナリズム
      • 安全保障の脅威から比較的免れていて、保守的イデオロギーあるいはその他の軍人の考え方に同情的なイデオロギーによって支配されている社会に現れる可能性がある
        • ex>20世紀のイギリス

2012年2月18日土曜日

ハンチントン『軍人と国家』-2

職業軍人倫理


人間、社会、歴史

  • 軍事専門職業の存在前提
    • 相対立する利害+それらを冗長するための暴力の行使
  • 軍人倫理は紛争を自然界にみられる普遍的なパターンとみなす
    • 暴力は人間の永続的な生物的・心理的性格に根ざすものと考える。
  • 善と悪では悪を重視する[性悪説的か]
    • 人間は利己的で、力、富、安全を求めて駆り立てられる→闘争へ
  • 人間の強さと弱さのうち(どちらかといえば)弱さを強調する
    • 人間の弱さ→組織、訓練、指導によて闘争に勝利する…これを重視
      • 「すべての戦争は人間の弱さを前提としている。そして戦争は弱いものに向かってなされる。」(クラウゼヴィッツ)
    • 並の人間では英雄になれないことを職業軍人は自覚
    • 戦争指導に内包された不確実性や偶然、敵の行動を予測することの困難さ[戦場の霧・摩擦]→人間の予見や統制の領域において軍人を懐疑的にする
  • 人間の理性と非合理性のうち、理性の限界を強調する
    • 「戦争は、不確実性の領域である。戦争における行為が基礎としている事柄のうち4分の3は、多かれ少なかれ不確実性の霧の中に画されている」(クラウゼヴィッツ)
    • 人間性は普遍的・不変的
  • 軍人の人間に対する考え方…悲観主義的:人間はホッブズ的
  • 軍事専門職業の存在の前提…(互いに競争する)民族国家の存在
    • 国家の軍事的安全保障の増進が責任
      • 社会全体への奉仕→個人よりも集団を強調
        • いかなる活動における成功も、集団意思への個人意思の服従を要求
        • 伝統、士気、団結、協調性…軍人の価値体型の中で高位を占める
        • 精神の協調性…根本的には反個人主義
  • 専門的職業としての軍事職業
    • ひとつのまとまった専門的知識を創り上げるところの蓄積された経験の存在
    • 人間は経験からのみ学ぶという考え
      • 自分だけの経験では不足
      • したがって、他人の経験から学ぶ→歴史研究へ
      • 軍人倫理…体系的かつ合目的的な歴史研究に、多大な価値を与える
        • 歴史は将来に適用される原理を発展させる場合においてのみ軍人にとって価値がある
        • 歴史理論からの解放
        • 一元的解釈の排斥、力の重要性を重視
          • 戦争と平和、攻撃的戦争と防衛的戦争はシーソーゲーム
国家軍事政策
  • 国家政策に対する軍人の考え方…軍事的安全保障に対する専門職業上の責任を反映
    • 国家=政治組織の基本単位
    • 国家の軍事的安全保障に対する脅威の持続的性格の重視
    • 安全保障に対する脅威の重大性と緊急性の強調
    • 強力かつ多様な常時利用可能な軍事力の維持への支持
    • 勝利が確実な場合を除けば、国家が戦争に関わり合ったり、それに巻き込まれることに反対
民族国家の優位性
  • 民族国家の存在に依拠する軍事専門職業
    • 軍事機構を維持する事実上唯一の存在
  • 民族国家=政治組織の究極的形態とみる傾向
    • 軍事力の維持・使用を正当化するものは国家の政治目的のうちに存在
  • 戦争は政治目的の手段
    • 国家の目的はそれ自身の破壊ではない
      • 「全面戦争」や「絶対戦争」は相互の荒廃をもたらしうるなら回避せねばならない
不安全の永続性と戦争の不可避性
  • 戦争の究極的回避の不可能性
    • 軍人は戦争の抑止を意図した制度的手段には懐疑的
      • 決定的要因は常に、諸国家間に存在する力関係
      • 外交はそれを隠しているに過ぎず、国際的な力関係を反映している限りにおいて有効
安全保障に対する脅威の重大性と緊急性
  • 軍人の国家に対する脅威の持続的性格の認識
  • 現在の危険の急迫性も強調
  • 軍人はその専門的能力の目標ゆえ、できるだけ正確に評価する必要あり
  • 同時に軍事的安全保障に対する危険を強調する専門職業上の利害と義務
    • どちらか一方になる
  • 主観的専門職業的偏見
    • 危険を過度に強調する傾向
  • 安全保障への脅威の評価
    • 他国の能力を評価する
    • 他国の意図は専門外…政治の領域
      • あらゆる場合を想定した計画立案
軍事力の水準とその源泉
  • 軍事力の拡張・強化志向
    • 軍事費の増大
    • 軍事的資源(経済、人口)の実際的な軍事力への換算
  • 銃後の生産能力より正規部隊の重視
  • ありとあらゆる事態への対応能力を要求
    • 実際には全てには対応不能→軍人は軍事的優先度の順位確立が必要
  • 安全保障体制や同盟による国家防衛への志向
    • プラスとなる限りにおいて
    • 純粋に国家安全保障上の利害に基づく(イデオロギーでも政治でもない)
  • 国力は領土拡張により強化しうる
    • 国力の増大につながらない領土は不要
誓約の制限と戦争の回避
  • 政治目標の妥当性は関心対象外であるが政治目標と軍事的手段の関係に感心
  • 政治家は国家の軍事的能力を超えて国家をコミットさせすぎることを警戒すべき
  • 「(政治目的は)それゆえに、専制的立法者ではない。つまり政治目的は、手段の本質にそのまま順応しなければならない。」(クラウゼヴィッツ)
  • 政治家は国家政策にダイナミックで意味のある要素の付与
  • 軍人は受動的で役立つ手段を代表
    • 政治家の目的が軍人の手段を超えたときに、政治家に警告することは機能
  • 軍人は攻撃的好戦的な行動に反対
    • 職業軍人は国策の決定に対しては慎重で保守的
    • (戦争になって一番被害を被るのは軍事組織である)
    • 軍人は戦争好きの部民の犠牲になると考える傾向
      • 戦争を始めるのは、国民であり、政治家であり、世論であり、政府である
      • これらに対して戦う必要あり
      • 軍隊自体は戦争を引き起こすことはない
        • 平和を希求する国家は十分な軍備が必要
          • 力の弱い国家は攻撃を招きやすい
        • 文民の政治は軍事予算の抑制と同時に、冒険主義的体外政策を追求し、人気を得ようとする傾向がある
          • 軍人はこれらに反対
軍部と国家
  • 軍事職業は専門的
    • その中では専門的、その外では非専門的
  • 政治は国家政策の目標を取り扱う
    • これは、軍人の能力を超越したもの
    • 軍の将校が政治に関与することは、そのプロフェッショナリズムの基礎を危うくし、専門的能力を喪失させ、自らに不利なように専門的職業を分割し、専門職業上の価値を無関係な価値で置き換えてしまう
    • ゆえに、将校は政治的に中立を維持せねばならない
  • 軍事科学の領域は政治の領域に従属し、独立している
    • 軍事専門職業は国家目標に奉仕する
  • 軍人は政治から政治目標を与えられることを期待する権利がある
    • シビリアンコントロールは政策の目的に対する一つの独立した専門的職業のこのような適切な従属がみられるときに存在する。
  • 国家に対する軍人の責任の3重の性格
    • 代表的機能
      • 国家内において軍事的安全保障の要求を表現
      • 軍と他の部門との資源分配を担当する公的機関に対して、考え方を提示する権利義務を有する
    • 助言的機能
      • 国家の取る行動に軍人としての観点から分析、報告
        • 決定はもちろんできない
    • 執行的機能
      • 軍人としての判断に真っ向から対立するような決定であっても、軍事的安全保障に関する国家の決定を補完する
      • ベストを尽くす
  • 政治的考慮は軍事的考慮に優先する
    • 純軍事的に見える決定も政策と関連している可能性に注意の必要あり
  • 軍隊という職域全体およびその軍事力は、国家政策の有効な手段として構成
    • 政治的決定は上(政治)からのみ来る
      • 軍隊という専門職業が服従のヒエラルヒーとして組織される
      • 即座の忠実な服従をほしいままにする必要(政治的決定が組織の内部で改変されてはならない)
        • これがなければ、ミリタリープロフェッショナリズムは不可能
      • 上からの合法的な命令はその意図を問わず直ちに実行される
      • 専門的能力という理想からみた軍人としての中世のいが不変的で一様
      • この理想により動機付けられたものが最も有能な将校団
        • 軍人としての理念に動機付けられた場合にのみ、軍隊は国家の忠実な奉仕者になるし、シビリアンコントロールも確保される
      • 専門職業的な将校団は徴募された人々の服従を確保することを目的とした国家の手段
軍隊における服従と専門職業上の権限との関係
  • 軍隊における服従と専門的能力の間の矛盾
    • 上官の命令に従えば、軍事的災害が起こると部下が考える場合
      • 服従の目的は上官の目的を促進すること
      • 上官の目的が部下に十分理解されており、かつ、部下が上官の知り得えない状況から考えて、その命令を実行しないほうが上官の目的を益する場合のみ、不服従を正当化しるう。
      • しかしこれはまれなケース
    • 運用面以外の教義上の問題を含む場合
      • 厳格で融通の聞かない服従は新しいアイディアを阻害
        • 歴史的に見て、そのような硬直性ゆえに現状にそぐわない戦術・技術の改良を妨げたことがある
      • 答えは難しい
        • 上級将校の権限は、優れた専門的能力を反映していることが前提
          • そうでない場合は、指揮のヒエラルヒーは非専門職業的目的のために濫用されている
          • 部下は教範よりも優れた考えを持っていることを主張する必要
          • それが指揮系統の分裂によるコストを補ってあまりあるベネフィットをもたらす場合はその不服従は正当化される
        • 究極的には専門職業的権限が最後の判定基準
軍隊における服従と非軍事的価値
  • 軍隊における服従と非軍事的価値と間の問題
    • 将校が国家的災難をもたらすことが明白な命令を政治家から受けた場合の将校の責任
    • 4つのグループ分け
      • 軍の能率を劇的に増大させる場合の不服従は容認されたが、それとパラレルな政治家と上級指揮官の関係はあるか?
        • 軍の能率は限界があり具体的、比較的客観性があるのに対し、政治的知識は限界を持たず、曖昧で主観的で正確が違う
        • 将校の政治的判断が政治家のそれよりも優れていることを証明しうる一般的な政治的価値というのは存在しない
        • 政治家の優れた政治的知識は、事実として受容する必要あり
        • 「ヒトラーに対する抵抗に参加したドイツ軍将校もマッカーサー将軍も、戦争と平和の問題を決定することが軍人の機能でないことを忘れたのであった。」(本文より)
      • 軍人の能力発揮が政府上層部によって脅かされるとき
        • 軍人がその専門的基準から判断すると、軍事的かつ政治的に意味をもたらさない、厳密に軍事的領域に属する手段を取る命令を政治家から受けた場合
          • 軍人本来の専門領域の明らかな侵害ゆえに軍人の不服従を正当化
      • 中間的な場合
        • 》自称《合法的に行動している政治家から命令を受けた場合
          • 専門家集団としての法務官に一任
          • 緊急でそれが間に合わない場合
            • 将校が政治的選択をするしかない
      • 基本的な道徳性との対立
        • 倫理的基準を判断し、適用する能力においては、政治家も将校も対等
          • しかし、政治家は国家の政治的利益助長のために一般道徳を無視することを強いられていると考えられるう場合がある
            • その場合、最も極端な例を除けば、服従すると期待するのが合理的である

    2012年2月7日火曜日

    ハンチントン『軍人と国家』-1

    専門的職業(profession)を職業(vocation)と区別・特性づける3つの要素
    • 専門技術(experitise)
      • 専門的職業人は特定の知識と技能もつ専門家
      • その専門技術は長期に渡る教育と経験により獲得される
        • 専門的能力の客観的基準→普遍的
      • 知識や技能についての基準→時と場に無関係に一般的な適用が可能
      • 専門的知識は元来知的なもの
        • 記録して保存しうるもの
          • 技能や技術は現在においてのみ存在
        • ひとつの歴史を有し、その歴史に関するある種の知識は職業的能力に必須
        • 専門的知識や技能の拡張や伝達のためには研究や教育の機関が必須
          • 新聞、雑誌、会議および実務-教育間の人的交流により、あるショック業のアカデミックな分野と実務的分野との接触が維持される
      • 職業専門的な専門技術には普通の商売に欠けている幅(breadth)という次元がある
        • 「幅」=その社会全体の文化的伝統の一部である。
        • 職業人は、自分が置かれているこのような広い伝統を意識しているときにのみ、自分の技能をうまく適用することができる。
      • 習得された専門的職業は「学ばれる」もの
        • 社会全体の学習組織の一部であるから
      • 職業教育の2つの側面
        • 広い、リベラルな文化的素養を与えること。
          • @社会の普通教育の機関
        • その専門的職業についての専門的な知識や技能を与えること。
          • @専門的職業自体が運営するorそれと密接な関係にある特別な機関
    • 責任(responsibility)
      • 専門的職業人は、社会が機能する上で書くことのできない健康や正義の増進といった業務を遂行するところの、ある社会的な関連のもとで働く実務的な専門家。
        • すべての職業の顧客は、個人・団体を問わず社会そのものであるが、その職業が社会の存立や機能にとって欠くべからざる必要性を持っていない場合は職業的専門人ではない。
      • その仕事が社会にとって有する必須かつ一般的な性格とその技能の独占が、その専門的職業人に、社会のその仕事を要求するときに、その仕事を遂行する責任を課すことになる。(ややこしい日本語なので私の理解を元に改めた)
    • 団体性(coporateness)
      • 専門的職業の成員は有機的統一体の意識と素人とは別種の集団であるという自覚を共通に持っている。
        • 専門的職業能力に必要な長期間の教育・訓練・共通の仕事の結びつき、および特有の社会的責任を共有していることに起因
        • 統一体の意識の表れ
          • 専門的職業的能力の基準の定式化・適用
          • 専門的職業上の基準を確立・強制する専門的職業組織そのもの
      • 専門的職業組織の一員であること
        • 専門的職業人としての資格
        • 素人から公にはっきりと区別された専門的職業人かどうかを判定する基準。
          • 専門技術+責任に加えて
      • 専門職業的能力が何の関連もない領域で発揮されることを成員に対して禁じる
      • 種々の理由により専門職業的能力を持っているのだと主張する部外者に対し自らの保護を要求する
      • 協会組織or官僚組織の形態を取る
    軍事専門職業
    • 将校という専門的職業はプロフェッショナリズムの基本的な基準に合致
      • 将校がプロフェッショナリズムの理想に近づくほど最も強力かつ効果的
        • 逆もまた然り
    • 将校の専門的技術
      • 「暴力の管理(The management of violence)」(by ハロルド・ラスウェル)に要約できる
      • 軍事力の機能=武力を使った戦いを成功させること
      • 将校の業務
        • 軍事力の編成、装備および訓練
        • 軍事活動の計画
        • 戦闘の内外でその作戦を指揮すること
      • 第一の機能が暴力の適用であるような人間組織を指揮し、動かし、統制すること=将校に特有の技能
        • 陸海空軍の将校に共通
        • 近代軍隊に存在する他のスペシャリストから軍将校を区別
      • 将校の技能は、総合的な研究と訓練を要する極めて複雑な知的技能
        • 技巧(クラフト、主として機械的なもの)や手法(アート、独得の譲渡し得ない能力)でもない。
        • 暴力それ自体の行使ではなく、暴力の管理である
          • 暴力の行使主体は下士官兵
      • 職業軍人の能力についての同一の基準は時と場を問わない、普遍的なもの
      • 将校という専門的職業は歴史を持つ
      • 暴力の管理は単に現存の技術を学ぶことでマスターされるものではない
      • 軍事技能をマスターするには、一般文化についての広範な素養が必要である。
        • 歴史のある段階における暴力の組織化と適用の方法は、そのまま、その社会全体の文化の類型と関連している。
    • 将校の責任
      • 社会は将校の専門技術たる暴力の管理が、社会的に認められた目的のためのみに利用されることを要求する
        • 将校が自己の都合のよいように専門技術を使用すれば、社会組織が破壊される
      • 将校の技能は暴力の管理であり、その責任はその顧客たる社会の軍事的安全保障である。
      • 将校の動機付け
        • 技能に対する愛情
        • 技能を社会の利益のために利用するという社会的義務観念
          • 金銭ではない
            • 十分な報酬は上の動機付けを確実にしうるだけ
          • (熱烈で一時的な愛国心に鼓舞されるが、暴力の管理においては自己を完結させようという確固とした永続的な希望を持っていない)市民兵でもない
      • 知的技能は厳しい研鑽によりマスターされ、
      • 人間との関連において技術的知識を適用することによりテストされる。
        • 経済的手段により規制されるものではない
          • したがって、将校は、同僚・部下・上官および国家に対する自らの責任を示すような明確な手引きを必要とする(よくわからない。)
            • 軍隊機構内部における将校の行動は、数多くの複雑な規則や習慣、伝統により縛られる。
      • 社会との関連における将校の行動は、自らの技能が、その政治的代行者である国家を通じて社会的に認められた目的に対してのみ用いられるのだという意識によって導かれる
      • 将校の責任は第一に国家に対して存し、将校の国家に対する責任は、専門的技術のアドバイザーとしての責任
      • 将校は自分の専門的能力の範囲を超えて他と関わりを持った決定をその顧客に押し付けることはできない
        • 将校は専門領域において顧客の必要とするものを説明し、
        • どうすればこれらの要求を満たしうるかについて顧客に助言を与え、
        • 顧客が自分の決定を行ったときには、その決定を実施する上で顧客を援助しうる
        • だけである。
    • 将校制度の団体的性格
      • 将校制度は公共的な官僚化された専門的職業である
        • その専門的職業に就く法的権利は、慎重に確定された団体の成員にのみ与えられる
      • 将校団は国家の創造物以上のものである
        • 安全保障という機能的命題が将校団を1つの自律的な社会単位に仕立て上げるような複雑な専門的職業上の諸制度を生み出す
          • この社会単位に入るのは必要な教育・訓練を経て、最低限の専門職業的能力を有する人々に限定
      • 将校団の団体的構造には社交クラブ、協会、学校、…も含まれる
      • 将校団は肉体的社会的に閉鎖的
      • 将校と素人or文民との区別は、公には制服と階級章による
      • 将校団の官僚組織性(引用別記)
      • 非専門職業的な「予備役」
        • あくまで補充に過ぎない。
          • 国家が危急の際に必要とされる規模の将校団を国家が常時維持することができないゆえ
        • 永続的な将校団への加入は制限を受ける
        • 予備役は生え抜きの(おそらく、eliteの訳)将校の専門職業的技能レベルに達することはない
        • ゆえに予備役の大多数は階級組織の中では以前よりは低い階級に付けられ、より上位の階級は生え抜きの将校により独占される
          • 生え抜き将校は集団として、その専門職業的能力ゆえに予備役を専門職業的技能や伝統の面での教育・教化を任される
        • 予備役は一時的に専門職業上の責任を果たすに過ぎない
          • 予備役の人の基本的な社会的機能は別のところにある。
            • 動機、価値、行動はしばしば生え抜き将校のものとはしばしば著しく異なる
      • 下士官兵との区別
        • 官僚制機構の一部であるが、専門職業的官僚制の一部ではない
          • 徴兵により集められた兵は将校のような知的技能や専門職業的な責任のいずれも持っていない
          • 下士官兵は暴力の使用においては専門家ではあるが、暴力の管理の専門家ではない
          • 彼らの職業は、商売(trade)であって、ここでいう専門的職業(profession)ではない
        • これらは将校団と下士官との根本的な差異を形成
          • この差異は世界中の軍隊において両者の間に普遍的に画される明確な一線に反映されている
            • もしこの断層がなければ、単一の軍隊的ヒエラルヒーがあるだけである
          • 実際は、組織のヒエラルヒーを不連続である
            • 下士官兵の中に存在する階級は職業専門的ヒエラルヒーを構成していない
          • 下士官兵の階級の上下は将校団のものより流動的
          • 将校と下士官兵は相互に移行を排除
            • 例外はある
          • 将校の資格として必要な教育・訓練は、下士官のしての長期間の軍務とは通常比べものにならない
    引用:
    将校団は、官僚的専門職業であるとともに官僚的組織である。この職域の内部においては、能力の大小は階級のヒエラルヒーによって区別される。また、この組織の内部においては、業務は職位のヒエラルヒーによって区別される。階級は、個人に備わったもので、経験、年功、教育および能力によって測られた彼の専門的職業上の業績を反映している。ある階級への任命は、通常、国家によって決められた一般原則を用いて少公団地震によって行われる。補職は、通常、階級の任命に比べると外部的影響をある程度受ける。あらゆる官僚制において、権威は職位に由来する。また、専門職業的官僚制においては、職位に就く資格は、階級に由来する。将校は、その階級に応じて一定の業務や機能を果たすことが認められる。彼はある職位に補職されたがゆえに、階級を受け取るのではない。実際には、この原則に対する例外は存在するけれども、将校団の専門職業的性格は、職位のヒエラルヒーに対して、階級のヒエラルヒーを優先させることにある。

    2012年1月21日土曜日

    『戦略の不条理』

    レポートに使おうと思い本を借りに行ったら、批判的に読めて面白そうだったので『戦略の不条理』という本を手に取ることになった。(目的の本もちゃんと借りたよ)

    本書のオリジナリティは、物質主義的なクラウゼヴィッツとその『戦争論』から、心理に重きをおいたリデルハートとその「間接アプローチ」を経て、新たにポパーを援用することで「知性的世界」という軸を戦略研究に導入することである。
    要すれば、物理的世界(クラウゼヴィッツ)、心理的世界(リデルハート)に加え「知性的世界」を以て、3次元的に戦略を分析しようということだろう。筆者はこれを「キュービック・グランド・ストラテジー」と呼んでいる。
    端的に言って、ここでいう「知性的世界」がいかなるものかというのはあまりよくわからなかった。ポパーの本は読んだことはないので、評価のしようがないのだが、その哲学を軍事戦略に援用する際に失敗しているという印象である。
    そもそも、知性が軍事戦略において重要な位置を占めているというのは当然ではなかろうか。知性なくして戦争を戦おうと考えたものなどいるのだろうか?ここで引用されている、『孫子』にせよ、クラウゼヴィッツにせよ、リデルハートにせよ、彼らをして著作を書かしめたのは知性以外の何ものでもないはずだ。わざわざ、「知性的世界」を軸として取り出す理由が感じられなかったし、筆者の言う「知性的世界」は「世界観(Weltanschaunung)」や心理的世界、その他、既存の概念に取り込めるような気がした。
    軍事戦略の1つの軸としての「知性的世界」で成功を収めた例としてロンメルがまず挙げられているが、ここで述べられているカメラを用いたイメージ戦略、小さい勝ちを重ねることによる彼我へのドイツ軍の強さのアピール、そして敵味方隔てない騎士道精神はそれとして解決していいのだろうか。そして、これを以て、ロンメルを「知性的世界への新しい間接アプローチ」の担い手とするのは先の理由より甚だ疑問である。少なくとも、M.V.クレフェルトの『補給戦』を読めば、北アフリカでのロンメルは補給の限界を無視して軍事的成果を求めて前進する(北アフリカのドイツ軍への補給のボトルネックは北アフリカでの後方連絡線の長さであったというのが結論)という、少なくとも補給に関しては洞察や知性を欠いていると評価せざるを得ない。
    「知性的世界」で成功し、戦争に勝利した例が描かれていないのが、この本にあまり説得力をもたらしていない原因の1つであるように思う。「ロンメルは譲って、「知性的世界」で成功したとしましょう。で、北アフリカ戦線で勝利を収めたんですか?」となる。
    ハンニバル、ナポレオン、孫子の戦略・思想が論じられている。
    ハンニバルの例をとってみるならば、物理的・心理的世界に成功しながら、知性的世界に失敗したために、それに成功したローマに最終的には敗れるということになる。だが、最終的にローマが勝利したのは、物理的・心理的基礎体力と「粘り強さ」にあるとみるのが適切である(アルヴィン・H・バーンスタイン「戦士国家の戦略」『戦略の形成』)。ローマには数多くの将軍と無数の兵士がいるが、ハンニバルは1人でその軍はローマの人的資源に比べると貧弱なものだったのだ。
    ナポレオンについても、ロシア遠征での失敗は「物理的世界を対象とする力による攻撃」に頼ったゆえに、ロシア軍の焦土作戦によって補給が苦しくなり坂を転げ落ちるように没落への道をたどったとなる。だが、またもや、M.V.クレフェルトによれば、ナポレオンはロシアでの補給の困難さについては予め理解し、対策を施していたという。結局、ロシア遠征(の少なくとも補給)が失敗したのは、馬匹による輸送という前近代的な輸送技術の問題ということになる。
    『孫子』については、端的に言えば筆者は「これこそが、キュービック・グランド・ストラテジーだ」と主張している。これについては、「机上の空論でしかない」という反論が有効である。孫武が軍を指揮し、どういう成果を収めたかについては不明である。また、「戦いを徹底的に避けて勝利を収めること」を良しとする『孫子』の考えと「文化的に優位な文明が、文化的に下位の蛮族を従え、統治する」という儒教的な考えが合わさったとき、対北方民族の統治、さらには国家安全保障について悲劇的な結末をもたらすということはアーサー・ウォルドロンがこれまた、『戦略の形成』内で「14世紀から17世紀にかけての中国の戦略」で詳述しているところである。

    終始一貫して思うのは、繰り返しになるが、既存の戦略研究がすでに知性に立脚しているということである。そして、ポパーからの援用である「知性的世界」は既存の分析概念で十分に対応可能であると思う。

    また、本書における経営分野での話というのは軍事分野でのそれとは違って、比較的納得の行くものであった。それだけに、軍事分野の話の引っ掛かりというか納得の出来なさが目立ったように感じる。「キュービック・グランド・ストラテジー」にもあまり納得は行かなかったが、軍事思想に重きを置く考えは私はどうやら満足しないようだ。
    私が一読する限り、「軍事戦略と経営戦略の大きく深い溝を埋める」という筆者の目論見は残念ながら成功を納めていないように思う。

    以上が、今の私の思うところである。何か思いつけば、追記したいと思うし、間違っていると思えば、訂正もしたいと思う。

    【追記】(同日)
    書こうと思って忘れてたこと。結局、「戦略の不条理」を解消するためには、批判的にモノを見ようねっていう在り来りなこととだったのもなんだかな、という感じだった。



    2012年1月5日木曜日

    salary

    逸見喜一郎、『ラテン語のはなし 通読できるラテン語文法』、2000年

    英語のsalaryの語源はラテン語のsalariumである。salariumという単語がsal<塩>という単語の派生語であることは、形態上、確実である。しかしだからといって「古代ローマでは兵士に給与として塩が与えられた」といったたぐいの、時に新聞などでお目にかかる訳知り顔の説明は困ったことである。
    salriumの意味は、残された古典ラテン語の用例から判断する限り、「文官・武官を問わず、ある程度の地位を得ている(したがって兵卒ではない)者に対して、定期的に支払われる金銭」である。なぜその金銭が「塩」に由来する名称を得たのかは、もはや文献的・歴史的に確定できない。実際に兵卒に塩が配れた事例を、私は読んだことがない。
    もちろんsalariumの語源が「塩」にあることは否定しようがないから、文献が残る以前の昔に、塩の現物支給があったかもしれないが、しかし想像はあくまで想像でしかない。むしろそうではなくて、「塩代」とでも婉曲に言ったのかもしれないのである。いずれにせよ文献上、「給料」をもらえたのは兵卒なんかではない。語源は歴史的事実を必ずしも明らかにはしない、と肝に銘じておいたほうが良い。

    2011年12月23日金曜日

    「列強国への胎動期」(『戦略の形成』所収)

    はじめに
    「偉大な地位」への3ステップ
    • 1783〜1815:独立維持のための奮闘期
      • 独立戦争、対仏准戦争、米英戦争
    • 1815〜:経済発展・人口増・領土拡張・通商拡大
    • 南北戦争:国家の統一保証、州政府<連邦政府
    アメリカの弱点
    • 戦略家の深刻なパラドックス:相反する2戦略の同時進行
      • 西部:攻勢
        • 自由民主政という「実験」の拡大への「責務」
      • 東部:防勢
    • 軍事的脆弱性
    • 地域ごとに分裂した国家像(州政府の独立性)
    • 戦略形成の「ポピュリスト的」側面
    アメリカの3つの利点
    • 相対的に劣等な敵
    • 地理的条件(大西洋の存在)
    • アメリカの驚異的発展
    個人主義/実用主義/戦略形成に影響を及ぼしうる組織の不在
    1.
    連合規約
    • ナショナリストの理想と悩み
      • 大国としてのアメリカを夢見るナショナリストたち
      • ナショナリストたちの悩み
        • 中央権力の不在/軍事的弱体
          • 原因:州政府の連邦への権力移譲の拒否
    • 海軍の不在と小規模な陸軍
      • 英・西・先住民・地中海の海賊・内乱への対処を困難に
    • より強力な国家連合への志向
    • 問題:州権/個人の自由/安全保障を維持する中央政府の並立は可能か
    • アメリカの戦略文化
      • 原因
        • 中央集権的な権力に対するイデオロギー上の不信
        • 地域主義に満ちた政治文化
      • 結果
        • 大規模な常備軍と系統立った軍事計画の成立を阻害
        • 連邦レベルでの軍備不在
    • 小活
      • 限定的な強制力の行使/ 課税による市民財産の搾取への躊躇/有権者の賛同への配慮→政府の軍事資源の動員能力の阻害
      • これらのイデオロギーは軍事的価値観(服従/規律/階層的な指揮・命令系統への絶対服従/自己犠牲)と衝突
    合衆国憲法
    • 自由の思想の担い手としての意識
      • 共和制を擁護せねばならないという使命感
        • 国内的安定保障/共同防衛/自由の恩恵の保障→ディレンマ・パラドックスを孕む
    • 自由と権力のバランス問題の解決策
      • 権力分立/抑制・均衡体制
        • 憲法の軍事規定にも権限の分配が具現化
          • 州と連邦で分配(ただし、連合規約とは異なり、州政府より連邦政府に多くの権限)
          • 軍隊の統制権は連邦議会と大統領に
            • 連邦議会
              • 宣戦布告/陸海軍の創設・募集・維持/課税/借入…等々
            • 大統領
              • 陸海軍・民兵の最高司令官/軍事指揮官の任命
          • 州の軍事権限に制約/連邦政府は州に対して一定の保障
    • 3つの注目点
      • 軍事力は対外のみならず、国内的安定のためにも用いられうる
      • 過去の経験・イデオロギー由来の複雑な軍事的遺産を体現
        • イデオロギー:急進ホイッグvs穏健ホイッグ
        • 過去の経験:市民兵(3種)と正規兵との「二重の軍隊」
      • ナショナリストの主張に沿った軍事規定
    • 連邦政府に理論上無制限の軍隊招集、課税の権限
    2.
    1789年の議会招集
    • ナショナリストによる合衆国憲法軍事規定の4つの政策分野への分類
      • 軍事問題を処理する機関の設立
        • 迅速に陸軍省を創設
      • 民兵の規定を実行に移す
        • 州政府との権限争いの核心部分ゆえ、解決困難
        • 有能な民兵創設へのフェデラリストの希望→統一民兵法により挫折
      • 常備軍の招集or notの決定
        • 有能な民兵の創設に失敗→常備軍が必須に
        • 常備軍の失敗→連邦志願兵の登用
          • 一定の成功→政府の対応能力の高さを示す
            • フェデラリスト→軍備の必要性の証明と考える
            • リパブリカン→内乱鎮圧を例に軍事独裁の例証
          • 中間的結論=正規軍規模縮小(ただし廃止ではない)
            • フェデラリストの目標の1つを達成
      • 海軍創設or notの決定
        • ヨーロッパでの対仏戦争の影響
          • イギリスを中心として、通商活動に干渉
            • 交渉と消極的防衛策で対応
          • 北アフリカにおける軍事的真空→アルジェリアからの脅威
            • 海軍法を制定→海軍創設
        • 海軍の主要任務
          • 通商促進/保護
          • 平和時には外交官の輸送/外交交渉への参加
          • 戦時には敵国の通商破壊
          • 本土防衛(陸軍との協力)
        • 政治論争の火種に
          • リパブリカン→ヨーロッパからの孤立/資源の西部開拓への集中
            • ヨーロッパ諸国に警戒心を与え、侵略を誘発する可能性
            • 帝国主義/冒険主義の萌芽→ヨーロッパへのコミットの可能性
            • 維持費用の増大
    ワシントンの大統領退任(1797年)時点
    • フェデラリストの目標は達成されず
    • ただし、前進は見られた
    • 制度・政策の今後1世紀あまりの維持
      • 能力の高い民兵/陸軍士官学校の創設には失敗
      • 永続的かつ包括的な平和期の軍事体制の構築には成功
    • 疑問点
      • 単一の共和国として存続するだけの結束力を固め得たか
      • フェデラリストは迅速に軍事力を創出し得たか
    対仏准戦争
    • 国内の分裂
      • フェデラリスト
        • フランス革命の求心性への嫌悪感
        • イギリスと戦うにはアメリカが弱体という意識
          • 米英両国の通商関係の重要性を強調
      • リパブリカン
        • フランス革命の反戦性的性質を指摘
        • 1778年の米仏同盟条約を重視
      • ジェイ条約はイギリスとの平和を維持
        • 前者に与し、後者は怒る
        • フランスの対米通商破壊戦を誘発→准戦争勃発
    • 准戦争の性格
      • 宣戦布告なし/範囲が限定的/国内で強い反対運動を誘発
        • その後のアメリカが関わった多くの戦争のひな形
      • フランスの通商妨害の停止という限定的な目標に従事
        • 「抑制された敵対行為」に従事するだけで十分
        • イギリスとの同盟は却下
        • 軍事行動に制限(武装したフランス船舶に対象を限定)
        • リパブリカンへの配慮も1つ
          • 人パブリカンの反発→政府の軍事的能力の阻害→内戦勃発の前兆と見做される
    • フランスによる侵攻(対外)とフランスの扇動による反乱(対内)の二重脅威
      • フェデラリストの対応
        • 大規模な軍備計画を策定
        • 外国人法・治安法によって「国家に対する不同意を不忠行為」とする
          • リパブリカンの反発→最終的に承認
            • 「不同意は必ずしも不忠行為を意味するものではないというアメリカの伝統」の確立
    • 初めて軍事官僚制度の大規模改革を促す
    • アメリカの歴史の中で唯一、純粋に政治的な軍隊の創設
      • 軍からのリパブリカンの排除
    准戦争後
    • フェデラリストの軍備計画からの反動
      • リパブリカンのジェファソンの当選
      • フェデラリストの軍事制度が存続するかが問題に
    • リパブリカン政権は穏健的ホイッグに傾倒
      • 准戦争中に承認された軍隊の多くを廃止するも、常設の軍事組織は維持
      • 陸軍解体の意思なし/フェデラリストの将校団に対する影響力の弱体化を志向
      • 陸軍士官学校設立
        • 高度に組織された民兵は確立できず
      • 海軍は維持されるも不十分な質・規模
    1812年戦争
    • 複合的な要因
      • 主要因の2つはアメリカの海上通商保護能力の不在に密接に関わる
        • イギリスによるアメリカの通商妨害
        • イギリス軍による強制徴用
          • アメリカの国家統合の急所(自国民の保護は政府の最低限の責務)
      • 3つの副要因
        • 西部地域の不作→農民によるイギリスの保護政策への非難
        • アメリカに敵対する先住民へのイギリスの支援への非難
        • アメリカ人の意識の根底にある攻撃的拡張主義(to カナダ/フロリダ)
    • 行政府の立法府に対する優位性
      • 特に戦略立案について
    • カナダ侵攻
      • 構想
        • カナダを占領すれば、イギリスはナポレオン戦争への悪影響回避のためにアメリカの要求に従わざるを得なくなる
        • 侵攻ルートは限定的
      • 失敗の要因
        • 限定的な兵力
          • 連邦政府は十分な兵力を正規軍として招集できず
          • 将校の配備や編成が州政府主導ゆえに彼らを完全に国家権力に服従させることができず
          • 財政面での脆弱性
        • 国家の戦略的利害と地域・地方の戦略的利害の緊張関係
          • 各地域・地方は国家のそれとは異なる脅威を抱える
          • 戦争の地域指向性・国家戦略との関連性の喪失
            • 連邦政府の脆弱性+運輸通信手段の未発達
            • 利点もある
        • 派閥主義
          • 将校間の協力なし
          • 軍種間の調整なし、計画のための組織なし
          • フェデラリストの戦争反対
            • カナダ侵攻作戦にも悪影響
    • ガン条約
      • 戦前の領土状態への回復・米加国境紛争解決のための共同委員会設置・戦争原因となった問題については放置
      • 当初の目的からすればアメリカの失敗
      • ただし、3つの理由からアメリカの外交的勝利
        • 戦争の発端となった諸要因は喫緊の問題ではなくなる
          • 海上問題の解決(←ヨーロッパ戦争の終結)
          • 先住民の脅威の排除
        • 戦争目的の、イギリスからの譲歩引き出しから領土損失なき国家存続への変化
          • (クラウゼヴィッツの援用)
        • イギリスの侵攻阻止
    • ヨーロッパ諸国にアメリカの独立と国家制度の堅牢さを知らしめる
    3.
    アメリカの拡大
    • 領土拡張による新たな安全保障上の問題の出現と既存の問題の深刻化
      • 防御すべき海岸が東海岸だけではなくなる
      • カナダとの国境の長大化
      • 南西部でのスペインおよび後のメキシコとの国境摩擦→戦争
      • カリブ海のヨーロッパ勢力
      • 先住民
    • 1812年戦争の衝撃
      • リパブリカンによる「節度ある軍備を整えるべきだとする」フェデラリストの考え方の再評価
        • 既存の軍事組織の強化・刷新
        • 戦略家の期待
          • 軍備の整備により、大陸領土の防衛/民主主義制度の維持/通商活動の促進
        • 地理的位置により、ヨーロッパ規模の軍備は不要
      • 戦争計画の基盤としての正規軍の維持
      • 参謀本部の設置・発展/総司令官職の設置
        • 制度不備
      • 民兵問題の未解決
        • 民兵は正規軍で置き換え
        • 正規軍は志願兵で補強
          • 志願兵は南北戦争直前に急増し、組織された予備兵として高次的役割
      • 要塞設備への予算集中
        • 海軍は小規模に維持される前提
      • 輸送網の拡充
      • 海軍の整備
        • 通商保護のため警備区域制度
        • 軍政・軍令システムの不十分
        • 保護対象と保護主体の量的差
    経済発展と領土拡大・人口増
    • 通商拡大
      • 海軍との連携による
    • 領土拡大
      • Manifest Destinyによる先住民領土の征服への理論的補佐
      • 対スペイン・メキシコとの戦争勝利
        • 制限戦争
          • 限定的な戦略目標
          • 国内的な反発
            • 「正か不正かにかかわらず、我々の国家」というスローガンに対する批判
    • 人口増
    • 経済発展
      • 農業の効率性・経済生産性の向上
      • 輸送手段の発達
      • アメリカ式製造法
    軍備に対する論争
    • 地理的位置により、常設軍備(陸軍)は不要
      • 膨大な資源と輸送力により余裕を持っての兵力動員が可能
      • 海軍・要塞の重視
    • 依然としてアメリカは脅威に晒されている
      • 過去の戦争の経験
      • 蒸気船による時間距離の短縮
    3.

    • 北部諸州の戦略
      • 戦略形成における個人の果たす役割の大きさとその非制度的性質
        • 戦略形成への国民性の反映
          • 個人主義/最小限の制度上の制約/実用主義
          • 正式な政策を案出するための制度・組織的手続きの不在
          • 軍事編制の弱い制度内での連携
            • 平和時に総司令官が容易にワシントンから司令本部を転出可能
          • 現実的かつ柔軟な姿勢で対応する戦略家
            • リンカンも同様
              • 方針を持たないことを方針とし、一貫性や教条主義的な解決方法に感心を示さず
      • 戦争開始時には相当程度の知性の人間が要職に
        • 戦争の経過に伴って同様の人が他にも高位に
        • 物事を明瞭かつ深く洞察できる自分つのみが対応できる戦略上の問題に直面
    南北の比較と採りうる戦略の検討
    • 人口と経済力
      • 北部が人口増加と経済の近代化の中心
      • 人口
        • 北部
          • 白人人口2000万人
            • 移民や黒人の新規採用による人的資源の補充
        • 南部
          • 白人人口600万人
            • 奴隷労働により理論上すべての白人男性を兵役に注ぎ込める
            • 人的資源の総量は一定
      • 北部の財政資源および産業資源の圧倒的保有
      • 鉄道網の北部の圧倒的有利
    • 人的資源・財源・物的資源での北部の有利を相殺する2つの要因
      • 数値化できない要素
        • 北部の国境沿いの奴隷諸州の動向
          • 南部に転ずればこれらのバランスが是正される可能性
        • 戦争の継続期間
          • 北部がこれら潜在的軍事資源を顕在化するまでに南部が勝利を収める可能性
          • 南部に与してのヨーロッパの干渉の可能性
        • 指導者の資質
          • リンカンは軍事指揮官としての教育・経歴が浅い
          • デヴィスは対照的
        • 士気持続性
          • 南部側に有利
            • 独立戦争の記憶とのオーバーラップ
      • 独立戦争の先例
        • 人的・物的資源で圧倒的有利なイギリスvsアメリカ
        • 北部は広大な土地を征服せねばならない
          • 北部の人的資源はそれに耐えうるか?
          • 短期戦の失敗
          • 敵意ある住民の地域での戦闘行為
          • 戦場での数的圧倒の失敗
          • 長大な補給線
            • 南軍の北軍補給線への襲撃
    北軍の戦略の進化
    • 北軍の戦略に求められる複雑な計画とタイミング
      • 統一的な組織の必要性(陸海軍諮問委員会/各部局間の協力)
        • 参謀長職の設置による連絡の円滑化
          • 便宜的な対応であり長続きはしない
    • 最終的には南軍の兵站資源の枯渇(消耗作戦)/軍隊の全滅(殲滅作戦)を志向する戦略へ帰着
      • 南部の戦争遂行能力の消耗
        • とりわけ銃後の士気低下
      • 消耗戦略を採用する上での障害は、短期戦による解決を求める北部の住民(スコットの考え)
    • 北部の戦争目的の臨機応変さ
      • 奴隷解放宣言はその一環(北部の戦争努力に根拠/イギリスの干渉阻止)
      • 人的資源不足解消のため、個人の自由・州の自律性の不侵害という伝統的制約を乗り越えての徴兵制の実施
        • 志願入隊の増加を目的
    • 内部での反対分子の存在
      • これまでの戦争と同様
      • 奴隷解放/徴兵制などの政府による強制的行動に対する反発
      • リンカンは市民的自由をうばうことで鎮圧
        • 具体的内容(ムチ)
          • 軍による市民の逮捕
          • 新聞社への圧力
          • 報道記者の電報の検閲
          • 連邦議会の人身保護条例の停止
        • 空前の危機を前にしての一時的対応と弁解(アメ)
          • 「自由の侵害は一時的なものである」との声明
    • 北部の強大化
      • 戦争開始時よりも多い兵士と物資
    • 戦争の正当化(「軍隊=専制的」vs民主主義の精神の対立構造の解消)
      • 「国境を超えて未来永劫にわたり影響を及ぼすほど重要な戦争を戦っている」という意識
      • 世界の手本となる民主制度を育む特別な運命を合衆国が担っているという意識
    大国の地位へ
    • 単一の政治体として存続する政府
      • 「連邦<州」の構造の確定
    • 大多数の開明的国民と未曾有の経済力を持つ政府
      • 豊富な天然資源
      • 広大な領土
    • 政府の巨大な軍事力の創出能力
    【追記】(12.01.19)
    民兵・ 常備軍・ 正規軍(兵)・志願兵

    議論の発端
    調査結果
    [強調部は引用者による]
    非常に眠たかったのであの時は混乱していたが、だいたい思ったとおりだった。

    民兵(Militia)
    • Militia in https://op.kulib.kyoto-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB03312125&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB
      • 国の正式軍人ではないが、武装した市民および軍事組織。
        • アメリカは入植以来数多くの戦争を経験してきたが、これを戦う上では正規軍人以外の人手も必要とされた。そこで、平時にはそれぞれの職をもち、非常時のみ召集される軍人、つまり民兵が参戦したのである。こうした民兵制度は1792年の民兵法(Militia Act)や合衆国法典(United States Code)に見られる。州兵(National Guard)はこの法典に規定される民兵として現存しており、通常は各州知事が統括しているが、非常時には大統領により正規軍へ編入される。[...]
    常備軍(Standing Army)
    • 常備軍 standing army in 前掲書
      • 平時おいても常置される軍隊。[...]絶対主義国家になると[...]常備軍が設置されるようになった。しかし、それは王家の利害を守る私兵的傭兵軍であった。それが18世紀のフランス革命を契機に解体されていき、国家の軍隊として常備軍が誕生した。[...]

    正規軍(Regular Armed Forces)
    • 正規軍 in ブリタニカ国際大百科事典(電子辞書版 2008)
      • 一国の法令によって組織され、政府によって正式に任命された指揮官の指揮下にある軍隊。民兵隊、義勇隊、レジスタンス、郡民蜂起などの非正規軍に対比される。ただし、国によっては民兵・義勇兵をもって国軍の一部または全部を構成する国もあり、そのような国についてはこれも正規軍とみなされる。正規軍および一定の要件を具備した非正規軍の構成員は交戦資格を持つ。[…]
    志願兵(Professional Service)
    • 志願兵制度 in 前掲書
      • 徴兵制度にたいして、志願兵によって軍隊を構成し、維持する制度。[...]アメリカでは植民地時代に義務兵役による民兵は、騎兵や、砲兵の高価な装備を買うことができなかったために、裕福な市民が志願したことに始り、州兵がこの伝統を引き継いでいる。[...]
    現段階での結論
    • 本論文における正規軍は常備軍と読み替えて差し支えない。
      • 本論文における正規軍、志願兵、民兵の差は次の本文中の次の一文に要約されている。
        • 植民地時代、独立戦争期、そして国家草創期における軍事的体験は市民兵と正規兵という「二重の軍隊」を中心に展開された。この「市民兵」という用語は、(1)共同民兵、(2)志願兵からなる民兵、(3)民兵に属さない志願兵という三種類の複雑な混合軍を表すものであった。(p.429)
        • この後、ここにおける共同民兵は上の志願兵で説明されているところの「徴兵」による民兵と解説されている。
        • また、この後、正規軍の説明が加わるが、その中で「2631人の将兵からなる常備軍」とある
    • したがって、少なくともこの論文では以下のように区別・対比されるべきと思う。
      • 正規兵と民兵は構成員の従軍期間(常時/臨時)により区別される。
        • また、法的には民兵は非正規兵。ただし、交戦資格は条件を満たせば認められる。
          • 国際法(ただし、「現在の」という留保がつくため、本論文でも適当とは限らない)上、民兵に交戦資格が与えられる条件(ブリタニカによる)
            • 指揮者に統率されていること
            • 共通の標識をつけていること
            • 公然と武器を持つこと
            • 交戦法規を守ること
              • (上の3つも交戦法規の規定では、と突っ込みたくなるが我慢。)
      • 志願兵は「志願」という編成の過程において国民皆兵制に基づく共同民兵と区別される。
      • 志願兵の性質は志願先によって変化する
        • 民兵隊への志願兵
          • 富裕層による半ば趣味/装備においては充足傾向(上記、調査結果中の「志願兵」の当該部分に相当)
            • のちの州兵に進化
        • 現地召集の志願兵  
          • 社会的身分の低い層/にわか仕立て
          • 民兵より軍務期間が長い
            • 職業軍隊としての性質を帯びる
          • 熟練度は高いが常備軍ではない
            • 緊急事態の終了に伴って解散
          • 1790~WWIにいたるまで、人的資源を動員する主要な方法


    2011年12月4日日曜日

    「世界戦略の起源-イギリス(1558〜1713)」(『戦略の形成』所収)

    読書メモ(難しかったので細かめに)
    本論の問題関心
    エリザベス1世〜現代にかけてのイギリスの戦略は「海洋国家としての立場」vs「大陸への介入の必要性」の緊張関係
    この緊張関係の根源となる3つの政策…(a)[おそらくこの3つが全てを視野に入れる戦略=世界戦略]
    1. ドーバー海峡の制海権維持による大陸からの本土防衛
    2. イギリスの海上交易の保護
    3. 大陸での覇権国家の出現の阻止
    これらの目標はお互いに結びついており、エリザベス1世時代に戦略を考える上で念頭に置かれていた
    しかし、スペイン継承戦争まで実際体な戦略体系としてまとまらず
    戦略体系の形成の遅れの原因…(b)
    1. 人的・物的資源の不足
    2. エリザベス1世時代の偉業の記憶
    3. 財政上の制約(→エリザベス1世時代の偉業を規定)
    イギリスの地理的特性=純粋な海洋戦略に依拠できる
    →2つの立場の対立…(c)
    1. 制海権の掌握のみで大陸諸国との戦争に勝つことができる
    2. 大陸諸国は陸上兵力をもってのみ打倒可能である
    (c1)の戦略が比較的優位→調和の取れた戦略の形成を阻害
    [本論では、スペイン継承戦争まで、なぜ(a)の3つの戦略が並立しなかったか、という観点から論じる]

    メモとして分り易くするために、財政軍事政治戦略で色分けしてみたい。

    海洋国家の揺籃期
    (順番は狂うが)
    世界戦略とは、人員・艦船・財源をハイペースで費消するもの
    世界戦略の必要条件=損害に耐え、それを補充しうるだけの財政行政制度…(d)
    (イギリスの状況)
    財政収入の少なさ財政難
    適正な規模の海軍を維持するのが困難
    →長期ともなれば更に不可能に近い
    →短期間で成果を上げる必要性が生じる=短期間・ハイリスク・ハイリターン(と思われる)戦略の追究
    しかし、しばしば、この戦略は目標と合致しない軍事的手段を取らせることになる
    議会と国王の対立→艦隊建設への投資の阻害(議会の、対スペイン同盟に資金が流れることへの恐怖)
    クロムウェルの登場
    議会が歳入と歳出を一手に握る
    時代背景(大陸の覇権国家の出現可能性の低下)
    • スペインの弱体化
    • フランスの内憂による弱体化
    この時代の2つの戦略的優先課題
    • オランダとの競争
    • 商業界からの地中海海域にコミットせよとの圧力
    クロムウェルの下でのイギリス→世界戦略に「近いもの」の達成…(a')
    • スペインの交易妨害の一部達成
    • 大陸への陸上兵力によるコミットの橋頭堡確保
    • アメリカ大陸・カリブ海・自国海域でのプレゼンス維持
    王政復古により後退する
    オランダとの戦争に[全力を投入する]
    国王との対立財政収入の問題の再浮上
    名誉革命→収入と支出の主体者の立場の一致→議会が課税に賛成
    債券市場の大規模化
    中央銀行による政府の信用の維持
    1700年までにイギリスの財政制度はヨーロッパ随一のものに…(d)の達成
    ただし、世界戦略への達成はまだ←イギリスの戦略的地位
    • フランス海軍の絶頂期→英仏海峡の防衛に英蘭共同で全力を注ぐ必要性
    • フランス陸軍への対応→陸上部隊を大規模にコミットさせる必要性
    1691/92年の2つの海戦世界戦略へのヒント
    「牽制艦隊(fleet in being)」によりイギリス本土の防衛は可能=国土防衛に海軍力すべてを費やす必要はない
    →この2つの海戦はすぐさまには顧みられず
    フランス海軍の弱体化
    イギリス側はフランス海軍の削減をすぐに察知することはなく、対フランス海軍の大規模戦力を残す(→世界戦略形成に遅れを生じさせる)
    一方で、フランス海軍は私掠船による通商破壊へイギリスの交易を世界規模で脅かす
    イギリス政府内での戦略形成の困難(戦略とは好機につなぐ選択肢を提示するもの)
    徐々に海上戦略と大陸戦略とが必ずしも二項対立的なものではなく、相互に融和的であることが認知される
    陸上戦略(この部分の意義付けはよく分からない)
    同盟国とイギリスとの目標のずれ→マールバラの活躍でイギリスは同盟国にその戦略を押し付けることが可能に
    海上戦略
    (フランスの脅威が不明な中で)艦隊分割に反対する声はあったが、徐々にフランス海軍が脅威にならないことが分かり、艦隊分割の方向へ→大西洋から地中海へ主軸の移動
    ミノルカの重要性の発見→ミノルカ-ジブラルタル-大西洋のラインの確保イギリスの地中海覇権確立
    地中海大国としてのイギリスの出現の重要性
    • イギリスの立場を永久に変容させる
    • 政策が一定化し、地中海でのプレゼンス維持が国家としての優先課題に
    フランスの通商破壊への本格的対応私掠船の減少
    アメリカ大陸への進出→世界戦略の確立
    [絶対的な海上優勢から相対的な海上優勢へ(?)]

    2011年9月30日金曜日

    「ペロポンネソス戦争におけるアテネの戦略」(『戦略の形成』所収)

    たぶん3回目。現状での理解ないしは、印象深かった点をまとめておく。
    • ペリクレスがスパルタとの戦争を望んだのは、スパルタがアテネの覇権を「しぶしぶ」認めている状況から、明示的に勢力圏を分割する方向性に持っていくため。
    • そのため、ペリクレスはわざとスパルタの主戦派を炊きつけ、防御的な戦略を展開し、「拳を挙げてもアテネはたじろがない」とスパルタに観念させることを企図した。
    • 外港ピレウスとアテネ市が長城でつながれており、攻城技術が未発達のギリシャ世界では、これらの城は攻略困難であった。従って、制海権を握っている限り、また、財政が破綻しない限り、アテネは穀物を輸入することで籠城を維持することができた。
    • アテネはデロス同盟を軸に帝国を創り上げており、財政基盤は開戦当初は磐石であった。
    • だが、ペリクレスの想定したとおり、スパルタは合理的な判断を下さなかったし下せなかった。
    • 戦争は当初の想定を上回る期間に延び、また、想定外の戦略活動が必要とされたため、想定よりも早く、アテネ財政は底を突きはじめた。このことから、ペリクレスの戦略は失敗の運命にあったと言える。
    • ペリクレス亡き以降も数年はその防御戦略が維持されたが、大局に影響はなく 、アテネ市民の一部では、戦略に変化を求める動きが出る。
    • アテネ内部での足の引っ張り合いが半端ない。1つの戦略に集中して取り組むことができたのはやはりペリクレスただ1人であった。
    • アルキビアデスの戦略眼はすごい。(WWIでトリポリ上陸作戦を企図したチャーチルの原則を援用して、彼の戦略を検討している点に注目。筆者はトリポリ上陸作戦の失敗について、戦略上の過誤ではなく、実施上の不手際に原因を帰している点から、チャーチルの原則はかなりの妥当性を持っていると考えている。ジュリアン・コーベットのイギリスの戦い方とよく似ている。)
    • シラクサ遠征は民主制の難しさを示している。非戦派のニキアスは、本心では反対の遠征に必要な人員を過大に民会にふっかけることで、遠征自体への反対を期待したが、スパルタへの不信感・敵愾心に満ち溢れる民会は、決定的勝利を追求してこれを許可してした。また、増援を要求するに際しても、同じことを意図したが、これもまた同じ結果に終わり、最終的にシラクサ遠征は不必要かつ喪失すれば国家存亡に関わるほどにまで大軍となってしまった。当のアルキビアデスは反対派により失脚させられてしまっていた。
    • 大軍の喪失・艦隊への大打撃・都市内の派閥争い・帝国内の反乱と災厄に見まわれつつも、アテネはスパルタとの対抗を維持する。しかし、ペルシャの財政支援を受けたスパルタは海上からアテネを締め付けることを企図し、これに成功する。(筆者は記していないが、アメリカの対日戦争計画・オレンジプランとよく似ている気がする。)
    • ペロポネソス戦争は典型的なランドパワーとシーパワーの激突であり、両者は各々得意とする戦い方(戦場)を以て勝利を目指したが失敗に終わる。一方が他者に勝利するためには、スパルタがそうしたように、相手の土俵で決定的勝利を得る必要があった。
    • ペリクレスの戦略が成功する可能性は、アテネがペロポネソス同盟諸国の痛点に攻撃を加える能力を維持している場合にのみ見いだせるものであった。
    • アテネの成功体験が損害を覚悟の上で陸上でスパルタを撃破するという方向へ自らを導くことを拒んだ。アテネはあまりにもローコスト・ローリスクで勝利を得ることに慣れすぎていた。
    • ペリクレスが疫病で倒れずもっと長く生きていたなら、その防御戦略に代わる適合的な戦略を見付け出していた可能性が高い。アテネをまとめ、一貫して戦略を実行することができたのはペリクレスただ一人であった。 

    2011年9月27日火曜日

    ズームイン朝のMCとジョッフル

    ズームイン朝のMCは降板すると、フリーになる(退社する)。
    一方、第一次世界大戦のフランス軍ではフランス陸軍最高司令官のジョッフルが元帥に昇格して、事実上更迭される。
    なんとなく、似てるなぁ。

    Wikipedia: ドライゼ銃

    この新兵器は1848年からプロイセン軍で徐々に配備が始まり、1849年にドレスデンで発生した5月暴動の市街戦において初めてプロイセン軍によって実戦使用されたが、1848年のベルリン暴動で武器庫から多数が盗難されてしまったため、その機密が維持されていた時期は短かった。
    プロイセンの台頭と共に、プロイセンと同盟した他のドイツ各州にも普及していったが、保守的だった多くの欧州諸国の陸軍は、ドライゼ銃の紙製薬莢にも後装式の優位性にほとんど理解を示さず、1860年代にプロシアが対外膨張へ転じるまでの長い期間、ドライゼ銃は過小評価され続けていた。
    ナポレオン戦争以後、第一次世界大戦以前の軍の保守性というのはいろいろ耳にする(機関銃による濃密な火網の過小評価、決戦兵科としての騎兵の重視、その他もろもろ)ところであるが、この保守性とは他の時代と一線を画するものなのだろうか?
    つまりは、この保守性は「他の時代と比べて」保守的である結果のか、そもそも、軍の保守的な「時代を越えた」ありかたが「世間一般に暴露される」ことになった結果のものなのかという疑問である。
    前者については、
    • ナポレオンの登場のインパクト(そしてまた、それに対して勝利したという成功体験のインパクト)が強すぎた
    後者については、
    • 軍というのが階級を持つものであり、概して年功序列であり、技術・方法論で大変革があると困る上の人が多いのはいつの時代も同じ
    • ナポレオン戦争以後の国民意識の高まり、新聞などの情報伝達手段の発達から、(よく知らないが、従軍記者などによって)軍にも透明性が生じつつあった 
    というのをそれぞれパッと思いついた。また思いついたらちまちまと書こうかな。

    2011年9月11日日曜日

    『ヒトラーとスターリン』:7

    『ヒトラーとスターリン』下 p.672 (訳者・根岸隆夫氏による2001年の解説)
    独ソ不可侵条約の研究者キャメロン・ワットの論文「諜報活動での驚き―ナチ-ソヴィエト協定の予測に失敗した英国外務省」(雑誌『諜報と国家安全』1989年4月号収録)は、クリヴィツキーが1939年4月29日の『サタデー・イヴニング・ポスト』誌で独ソ不可侵条約締結4ヶ月前に独ソの接近を予測、5月4日に、『ボルチモア・サン』紙記者にリトヴィーノフ外相の解任でスターリンはヒトラーに接近意思を明確にしたとし、同じ2つの記事でスターリンの同郷グルジア出身のカンデラキ・ベルリン駐在ソ連通商代表部による1936年と1937年の冬にかけての対独接近工作に触れているのにかかわらず、英国外務省は全く信憑性に欠くとして無視したと論じている。これは日本外務省とて同じで、クリヴィツキーの証言は公開情報なのであるから、これを重視して独ソ接近のシナリオを描くこともできたはずだ。何よりも日本の外交暗号を(それに陸軍暗号も?)破ったと彼は言っているのであるから、暗号の徹底的変更を行って、1940年代に日本が経験する悲劇を少しでも和らげることができたのかもしれない。公開非公開を問わず情報一般の重要性にわれわれ日本人は著しく鈍感だ。日本語は難しい、外国人にはわかるはずがない、というのは驕りであり無知であるが、当時も今もあまり変わっていないようだ。現在日本の政治・経済・軍事・企業の情報がどれほど刻々垂れ流されているか、想像するだに背筋が寒くなるではないか。ましてインターネットの時代である。昔は今の鏡なのである。

    2011年9月10日土曜日

    『ヒトラーとスターリン』:6

    『ヒトラーとスターリン』下 pp.627-628
    情報源、組織、その長がみな優秀だったのなら、いったいなぜソ連はドイツの侵略にあれほど無防備だったのかと問われて当然だろう。
    ジューコフはのちに「問題はゴリコフがスターリンの直属で、他の誰にも、参謀長[ジューコフ自信]にも国防人民委員のティモシェンコ元帥にさえも報告しなかったことだ」と述べている。
    ゴリコフはスターリンの子飼いで、スターリンはゴリコフの情報本部が作成した報告と分析を読むだけだったのだ。スターリンはチャーチルとちがって、情報の意味と信憑性を自分で判断するために時どき原型のまま情報を調べてみる手間を決してかけなかった。そのうえスターリンは情報の区分け、すなわちマルかバツか、「信頼すべき筋」と「疑わしい筋」に仕分ける作業をゴリコフに任せっきりだった。ゴリコフがいったいどんな分類基準を用いたのか、それは誰にもわからないが、1941年3月20日に彼があちこちのGRU要員に送ったメモからいくらか想像はつく。彼はスパイ網にこう指示していた。「戦争が間近いと述べている資料はすべて、英国またはドイツの情報源によるでっちあげとみなすこと」。
    赤いオーケストラの「大親分」レオポルド・トレパーもこういうメモを受け取った側だが、彼によればゴリコフはシュルツェ=ボイゼンやゾルゲやまたトレパー自身といったスパイからの重要な報告の余白に「二重スパイ」とか「英国情報」と書きなぐるのがつねだったという。こうしてゴリコフは、スターリンが自分の現実観に一致しない情報のすべてに抱く疑惑を確認させてやったのだ。
    なぜゴリコフはこんなことをしたのか?明白かつおそらく正しい答えは、スターリンがそう望んだということであり、ごり古布はそれにしたがったにすぎず、ロシアの3U症候群、つまりウガダート、ウゴディート、ウツェレートと呼ばれるものを発揮したにすぎないのだろう。これは「嗅ぎつけ、胡麻すり、生き延びる」とでも訳したらいい。あるいは別の言い方をすれば、ボスが何を望んでいるかを知り、何をおいてもそれを提供するということだ。

    2011年9月8日木曜日

    『ヒトラーとスターリン』:5

    『ヒトラーとスターリン』下 pp.611-612
    こうした噂話は無意味で取るに足らぬものに思えるかもしれない。しかしこれは混乱と「雑音」を作りだすのに貢献することで偽装宣伝全体の中で極めて重要な役割を果たした。つまり本物の情報を、偽情報や歪曲や不完全な情報の海のなかに埋没させたのである。後になってみれば真実の情報を取り出すのはいつだって簡単だが、その渦中にあっては事実上不可能で、敵が「雑音」製造に成功すればするほど難しくなる。たとえばスターリンは「バルバロッサ」開始が6月22日だという正しい情報を得ていた。しかし彼のもとには開始日が4月6日から5月いっぱい、6月15日至るまでばらつきのある情報も届いており、それがことごとくまちがっていたのだから、ほんとうの日程を額面どおり受け取るのはおぼつかなかったのだ。宣伝省の高官ヴェルナー・ヴェヒターはのちにゲッベルスの手法を見事に単純な言葉でこう説明している。「バルバロッサ」の準備にはおびただしい噂がともなった。「そのどれもが等しく信憑性があり、終いにはどれがほんとうだか誰にもわからなくなっていた」。
    攻撃の時が刻々と近づくにつれ、この評はたしかにスターリンと彼の諜報部の幹部たちには当たっているようだった。

    2011年9月6日火曜日

    『ヒトラーとスターリン』:4

    『ヒトラーとスターリン』下
    p.547
    モロトフの返答は、間違いなく外交史上最も強烈なものだった。ドイツ人はもう英国に勝ってしまったふりをしている、と言ったのだ。したがって、ヒトラーが以前言ったようにドイツが英国と生死をかけて戦っているとすれば、自分としてはこれを、ドイツは「生のため」、英国は「死のため」戦っているのだとしか解しえない。この辛辣な皮肉にリッベントロプが全く気づかず、英国は事実上おしまいだと繰り返すと、モロトフはうんざりしながら、止めの一撃を加えた。
    「だったら、我々はいったいなぜこんな防空壕にいるのだ?落ちてくるあの爆弾はいったい誰のものなのだ?」

    2011年8月31日水曜日

    『ヒトラーとスターリン』:3

    『ヒトラーとスターリン』下
    p.467
    「5月15日水曜、午前7時半。ロンドンの海軍省で床についていたウィンストン・チャーチルは、電話のベルでたたき起こされた。6週間前にダラディエからフランス首相を引き継いだ、ポール・レイノーからだった。チャーチルは寝ぼけまなこだったが、レイノーの第一声で眠気は吹き飛んだ。
    「我々は敗北した」と、彼は言ったのである――興奮したようすで、英語を使って。
    チャーチルはあっけにとられ、一瞬言葉を失った。
    「我々は負けたのだ。」レイノーは繰り返した。「戦いに破れてしまった」。
    チャーチルは必死になってレイノーを説得しようとした。経験から言えば、ドイツ軍は数日後に補給のために停止せざるを得ないだろうし、その時には反撃可能だ、と。だがフランスの首相は最初の言葉を繰り返すばかりだった。「我々は敗北した。戦いに敗れてしまったのだ」。」

    2011年8月10日水曜日

    『ヒトラーとスターリン』:2

    『スターリンとヒトラー』下
    p341
    「だがジューコフは持ち前の苛烈な将軍魂を発揮して戦い続けた。あるとき日本軍の重要拠点を急襲し、大損害を出して敗走した師団長が報告に来て次の命令を仰いだとき、ジューコフは再度攻撃するよう命じた。しばらくしてジューコフは自らこの師団長に電話し、どうなっているかと聞いた。
     「いつになったら攻撃を始めるのだ?」と聞かれた師団長があやふやな態度をとったので、ジューコフはこの男を即座に師団長から解任してしまった。
    「参謀長と電話を代われ」とジューコフは命じた
    参謀長が電話に出ると、ジューコフは師団の態勢を立てなおして再攻撃できるかと聞いた。できると答えた参謀長をジューコフはその場で師団長に任命した。この男もまた前任者同様、攻撃に移れなかったのを見てジューコフはふたたび彼を解任し、今度は自分の幕僚をその任につけた。方兵隊と空軍の援護を受けて再度攻撃した師団は、甚大な損害を出しながらもついに日本軍拠点の制圧に成功した。」